失敗体験を自己肯定感に生かすために大切なこと⑤
こんにちは。
東京支部カウンセラーの本沢裕太です。
冬季オリンピックも閉幕しました。
皆さんは、どの競技に注目してご覧になられましたか?
私は、開催期間中に地上波で放送された映画「クールランニング」の題材となったボブスレーも大変気になりましたが・・・(笑)
やはりフィギュアスケートが大変興味深かったです。
10代の若い選手たちが大活躍されていたのもわくわくさせられましたし、羽生結弦選手は惜しくも大技は失敗してしまいましたが、安定した演技で魅了してくれました。
また坂本花織選手は、リスクの大きい大技にこだわらず、ご自身のできる技を磨いたことでメダルを獲得されていましたね。
その人それぞれに合ったアピールの仕方があるということを改めて感じましたし、一流と言われる方々は「自分てどんな人」「どんな事が向いている」などの自己認識をしっかりとされているなあと思いました。
きっと、自身の理解を深めるための時間や労力を大切にされているのだと思います。
今回のブログも、「自身の理解を深めるため」に少しでもお役に立てたら嬉しいです。
前回は、自尊心の低さと全般性についてお伝えさせて頂きました。
その中で、自分の価値を確認する機会ができれば、防衛的な反応を抑えて、自分にとって脅威になるかもしれない情報を受取ることができるようになるということでした。
では、お子さんが自分の価値を感じられる為に、どの程度の課題を、どの様に促していけば取り組もうという姿勢が導き出しやすいか、ということについて、ある実験結果を基にお伝えしたいと思います。
Atkinson(アトキンソン)の期待価値理論
まずアトキンソンは、個人のモチベーションを2つに分けました。
①満足感を最大化するため
②苦痛を最小限に抑えるため
そして、それぞれを、①達成動機、②失敗回避動機と定義しました。
達成動機には、
- 達成欲求
- 課題に対する成功確率(期待)
- 成功の誘引価値
という3つの要因が影響していると考えました。
●達成欲求とは、達成した時にそのことを誇りに思えるかどうかという感情的な部分です。
●成功確率(期待)とは、文字通り上手くやれる確率のことですが、これは主観的なもの(操作が可能)であるとされています。
(・・・ということは、捉え方次第で変化する可能性があるということですね。)
●誘引価値は、その課題に取り組む価値についてです。
自分自身の成長や、周りからの評価や報酬などが分かりやすいかもしれません。これは成功確率が低くなるほど増すと言われています。
それはなぜかというと、「達成した時の誇り」という感情をより強く感じるのは、簡単なタスクより困難なタスクで成功をあげた際に経験されるものだからです。
(フィギュアスケートでいうと、4回転ジャンプなどがそれにあたるかも知れませんね。)
一方で、失敗に対する恐れや失敗を回避しようとする傾向は
- 失敗回避動機
- 失敗の確率
- 失敗の誘引価値
いう3つの要因が影響していると考えました。
こちらは、達成欲求とは対照的で目標が達成できなかった時に感じる恥や屈辱といったネガティブな感情と考えられるので、困難な課題での失敗より簡単な課題での失敗の方が、そういった感情を強く経験するので、回避傾向は強く現れます。
以上のことを踏まえた上で、どういった条件が揃うと達成動機が強まるのかという実験が行われました。
すると、達成動機が失敗回避傾向よりも強い場合には、成功確率が50%の時に達成動機が最も強まるという結果が出たのです。
「達成したい」という欲求と、上手くいくかどうか半々くらいだと感じる期待度と、半々だからこそ上手くいった際に得られる価値とのバランスが一番魅力的に感じられるのだそうです。
「不登校」で考えると、この状態の時がまさに「登校刺激時期」に当たると思います。
逆に達成動機よりも失敗回避傾向が強い場合ではどうでしょうか。
その場合は、全ての課題を回避しようとするという結果が出ました。
もしその中で、どうしても一つを選ばなければならないとしたら、最も簡単な課題、もしくは最も困難な課題のどちらかが選ばれました。
それは、最も簡単で失敗の恐れがほとんどないか、あるいは最も困難で失敗したとしても恥をかいたり自己非難に陥らないからです。
こういった傾向が見られている場合は、無理に課題を設定するのではなく、お子さんの中での「失敗回避動機」や「失敗の誘引価値」を下げられる様な人間関係の構築や環境づくりから行っていけるのが望ましいと思います。
いかがだったでしょうか。
今のお子さんの状態を、正確に踏まえた上で、お子さんの達成動機を促していける様、一緒に考えてまいりましょう。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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