不登校の経験は何に繋がるのか~実態調査のデータを通じて~
こんにちは。不登校支援センターです。
こちらは過去記事となります。皆様の日々のかかわりのご参考になれば幸いです。
皆様の周りには不登校を経験された方はいらっしゃいますか?
不登校支援センターのHPを見て頂いている方々の多くは、現在不登校に関わっている状況かと思います。不登校の解決を望む方も多くいらっしゃるかと思いますが、不登校を経験した人のその後について気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は文部科学省が出しているデータを参照しながら不登校の経験が何に繋がるのかをお話したいと思います。
*今回参照するデータは「不登校に関する実態調査 平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書」。平成18年度に不登校だった中学3年生の生徒を対象として、その5年後の状況を調査した報告書です。
不登校から5年後の状況
不登校のその後を考えた時、進路について気にかかっている方も多いかと思います。
中3時点で不登校だった生徒の5年後は以下のような結果になっています。
〇就学・就業状況
就業のみ 34.5%、就学のみ 27.8%、就学・就業 19.6%、非就学・非就業18.1%
*非就学・非就業には専業主婦・主夫も含まれています
○就学先
大学・短大・高専 22.8%、高等学校 9.0%、専門学校・各種学校等 14.9%
○ 就業状況
正社員 9.3%、パート・アルバイト32.2%、家業手伝い3.3% 会社経営 3.4%
上記の調査結果の通り、就学・就業をしている人の割合は約80%でした。
皆さんはこの数字を見てどう感じますか。
「意外と多い」「そんなものか」「不登校だと2割は何もしていない可能性が出てくるのか」等々、様々なことを考え感じられたかと思います。
対象とする年齢幅や調査した年代が異なりますので、比較することは難しいですが2020年時点での若年無業者(15~34歳のうち就業しておらず、かつ就業の意思がない。加えて家事も通学もしていない者)の人口に対する割合は2.8%です。
もちろんこの数値を単純に比較することは出来ません。
ただ、不登校の経験はその後の進路に少なからず影響を与える部分はあるかもしれません。
実際に、中学卒業時に希望通りの進路に進むことが出来なかったと回答した人の中で、不登校であったことが「かなり影響している」「少し影響している」と回答した人の割合は76.5%でした。
しかし、決して不登校の経験がネガティブなものだけではないことも調査結果からは分かっています。
不登校の経験が与えた影響
不登校の経験を通じて得るものは人によって様々です。勉強や進路にマイナスな影響を与えたものだと捉える人もいれば、不登校という経験があったからこそ前に進めたと考える人もいます。あるいは年月が経って、当時の経験を振り返り意味を見出すこともあるでしょう。
今回ご紹介した調査に協力した方々の中に、インタビュー調査に協力した方々もいました。
調査結果によると肯定的な影響として
- 「休んだことで今の自分がある」
- 「成長した・視野が広がった」
- 「出会いがあった」
- 「人とは違う経験をした」
- 「人に優しくなった」
などの意見が挙げられています。
不登校だった経験を受け入れて、そこから何を得たのかを振り返ることで成長に繋がることが上記の意見から伺えます。
実際のカウンセリングを通しても、子ども達が自身の経験を通して成長していく姿を見ることが出来ます。
中には不登校という経験によって変化したこと、得たこと、出会い等を振り返る中で自ら感じた成長を話してくれる子もいます。
最後に
不登校の経験にはマイナスな面も存在します。
しかし、プラスな面を見出して前に進むための糧にすることもできます。
同じ経験をしても人よって得られるものは異なりますし、得た経験を自分の中へ落とし込むことに時間がかかることもあります。
考える角度を変えると同じ経験でも別の解釈が見えてくるかもしれません。
新しい視点が必要な際は、私たちカウンセラーも一緒に考えていきますのでお気軽にお声掛けください。
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(*1) 文部科学省(2014),「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~
(*2) 総務省(2020),労働力調査(基本集計) 2020年(令和2年)平均結果