失敗体験を自己肯定感に生かすために大切なこと④
こんにちは。
横浜支部カウンセラーの本沢裕太です。
前回、前々回とで、原因帰属の外的要因、内的要因についてお伝えさせて頂きました。
「不登校」に限らず、「なぜお子さんが今の状態になったのか?」というのは、様々な要因が含まれていることや、ご本人がどの様に受け止めるかということが大きく関わっていることがご理解頂けましたでしょうか。
自尊心と全般性
さて、今回は、自尊心と全般性との関係についてお伝えしたいと思います。
自尊心とは、自尊感情とも呼ばれたりしますが、自分に対する全体的な評価を意味します。
そういった自己評価は、自身の達成や失敗だけでなく、他者との比較によっても変動すると言われています。
全般性とは、全般的と特殊的に分類されます。
1つの原因が別の場面でも同じ結果を起こすと考えるが全般的、その場面に限られたものと考えるのが特殊的という考え方です。
例
・自分は何をやっても楽しめない。(全般的)
・今回は自分の好みに合わなかった。(特殊的)
自尊心が低いほど、つまり自己評価が低いほど失敗を全般的(何をやっても、いつも etc)と捉える傾向があると言われています。
すると、どういうことが起こるのかというと、自己評価を維持しようとするために
- 自己評価を下げる情報を避ける
- 情報の価値を低く評価する
- 情報の持つインパクトを低減しようとする
などの防衛的反応(自分がこれ以上傷つかないように、自分を守る)が見られます。
例えば、セルフハンディキャップと呼ばれますが、
大事なテスト前に、長時間のバイトをして勉強時間を少なくしてしまう、といった失敗の原因となる外的要因を自ら作り出して、失敗をしても自己評価の低下を避ける行為などが代表的です。
目標を追求するために
成功を目指すのか、失敗を避けるのかという点においては個人差が表れます。
これは、親御さんとお子さんの間、ご夫婦の間でも起こり得ます。
その人にとってパフォーマンスが発揮されるのであれば、どちらを選んだとしても正解なのですが、
防衛的反応が出ている時に行動を起こさせようとしても、思うようにいかないだけでなく、ご本人にとってもその後の糧とならない事が多くなってしまうかも知れません。
もしも、効率よく目標を追求しようと思えば、当面の目標に無関係なもの、あるいは拮抗するものは抑制される必要があります。
そのことを、「自己制御」と呼びますが、自己制御をするにも「資源(制御資源)」が必要となると言われており、その資源は「有限」なものとなります。
この資源は、日常生活の様々な自己制御に共通して使用され、一度に消費すると枯渇してしまいますし、枯渇してしまうと通常制御されていた行動も制御できなくなってしまいます。
例えば
- 明日早く起きる予定だから、今日は早く寝よう
- 面倒くさいけどお風呂に入ろう
- ゲームが良い所だけどキリが良い所で止めて食事にしよう
- 宿題を今日中に終わらせておこう
などです。
ご相談の中で、
「急に学校に行かなくなった」「急に習い事にいかなくなった」「急に勉強しなくなった」「最近はお手伝いしてくれなくなった」
などのお話をお聞きすることが多いですが、お子さんの中で自分を制御する資源が枯渇してしまったかも知れません。
そして、制御資源が枯渇してしまうと防衛的反応が出やすい状態と言えます。
しかし、
自分の価値を確認する機会があれば、防衛的反応を抑えて脅威となる情報を受け入れることができます。
では、どういった機会を経験していけば、脅威となる情報も受け入れることができるようになるのかというと
お子さん一人一人によって違うので、カウンセリングの中でも様々な角度から検討していきたい点です。
あくまでも1つの手がかりとしてですが、今ご本人がどういった情報を求めているのかということからも、本人の状態が想像しやすいかも知れません。
- 正確な評価の情報を求めている
- 好ましい評価の情報を求めている
- 自分の評価に一致した情報を求めている
- 自分を改善する情報を求めている
などの様子を観察して頂きながら、ご本人の状態に合わせて、ご本人にどういった声掛けが響くのか、一緒に考えて参りましょう。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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