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失敗体験を自己肯定感に生かすために大切なこと③

こんにちは

不登校支援センター横浜支部カウンセラーの本沢裕太です。

2022年となりましたね。

皆さんは、どの様な1年にしたいですか?

私は、様々な背景から「不登校」となっているお子さん、そしてそのお子さんの様子に心を痛めてらっしゃる親御さんのお気持ちが少しでも軽くなり、自分自身に優しくなってもらえる様に、ブログを発信していけたらと思いますので、良かったらまた読んでみてくださいね。

前回は、「内的要因」の種類やメリット・デメリットについて書かせて頂きましたので、今回は「外的要因」について書きたいと思います。

※補足 前回のブログで、内的要因・外的要因について説明不足だったので、加筆致します。

  • 「内的要因」とは、個人内の諸要因(能力、努力、知恵など)
  • 「外的要因」とは、環境内の諸要因(天候、運、他人など)

と言い換えられます。

例えば、ボートを漕いで対岸に渡ろうとする時

① 漕ぐ能力があるのか
② その能力を発揮できたか
③ 順風なのか逆風なのか

の条件の組み合わせに左右されることになります。

対岸に渡れた時に、個人内の要因に帰属するのか、環境内の要因に帰属するかによって、

その後の行動に違いに注目したのが原因帰属理論です。

対岸に着けたことを「風次第である」と認知した場合、風のある日にだけ渡ろうとするかもしれないし、誰かが協力してくれるなら渡ろうとするかもしれないし、極端な話、もう二度と漕ぎ出そうとしないかもしれません。

逆に、個人内の要因に帰属されると、自分の能力や努力に誇りを感じられ、困難な課題もうまくできると期待し挑戦するようになるかもしれません。

それでは、外的要因に帰属するメリット・デメリットを考えてみましょう。

メリットとしては

  • 失敗した時の落ち込みが抑えられる
  • ストレスに感じることは少ない
  • 気持ちを切り替えやすい

など、望まない結果になってしまったとしても、「仕方がなかった」「次頑張ろう」と切り替えることができ、自分への負担を少なくするメリットがあります。

一方、デメリットとして

  • 達成感が得にくい
  • 人、環境のせいにしやすい
  • 無責任になりやすい

など、良い結果が得られたとしても、「たまたま問題が簡単だったから」「運が良かっただけ」の様に自分の成果として感じられないため達成感は少なく、持続的な意欲に結びつきにくいという点や、他者や状況のせいにし自身の取り組みについて振り返ることが減るので、無責任になりやすいというデメリットがあります。

外的要因の種類として挙げられるものが以下の4つとなります。

  • 教師の偏見
  • 課題の困難度
  • 他者の日常的ではない援助

「教師の偏見」は、コントロールが可能で安定的なものとされています。


この分類を納得するのに、私自身も時間がかかったのですが、こちらの理論を提唱した研究者の意図としては以下のものになります。

「教師の偏見そのものは外的で安定的な要因で学生にとって統制不可能な側面が高いが、もし学生が一時的に努力をし、教師のお気に入りになれば、うまく教師の偏見を利用して、便益が図られる(いい点数をもらうなど)と考えられるので、それを統制可能と考える」

教師の偏見(印象)が安定的というより、固定しやすいと捉えると幾分か納得しやすくなりました。

「課題の困難度」は、コントロールはできませんが、「困難度」は基本的には変わらないもので、安定的なものとされています。

「他者の日常的ではない援助」は、自分から求めることができるという意味ではコントロールできますが、その援助が結果に影響を与えるかどうかという点では不安定であるとされています。

「運」は、自分でコントロールすることも、安定させることもできないものとされています。

これらの外的要因は、上手くいった際のフィードバックではデメリットになることが多くなりますので、

上手くいかなかった際のフィードバックで用いてもらうのが効果的だと思います。

フィードバックで用いてもらう際の注意点

フィードバックの際に、例えば

  • 先生の印象が悪かったからしょうがないよね (だから課題だけでも提出しておきなさいって言ったじゃない!)
  • 問題が難しすぎたから仕方ないよね (だから前もって勉強しておきなさいって言ったじゃない!)
  • 周りの人がサポートしてくれていれば上手くいったのにね (もっと自分から発信しないと分からないでしょ!)
  • 運が悪かったね (自分ではどうしようもないのだから諦めなさい。)

という点だけで終わらせてしまうと、「自分ではどうしようもないんだ・・・」という気持ちだけが強まってしまい抑うつ的な気分を助長してしまいます。

例えば

「課題の途中経過も評価してくれるみたいだから、このページだけ一緒にやってみて先生に見てもらわない?」

「今回、問題が難しかったね。その中で、①と②が解けているのはさすがだね。落ち着いて考えれば③も解けると思うよ。一緒にやってみない?」

「いざという時、先生に何て言ったら良いか分からないよね。あらかじめ用意しておいたカードを渡したり、サインを決めておいたら伝えやすいと思うんだけど、どうかな?」

「今回は運が悪かったけれど・・・運は巡ってくるものだから、次回運に恵まれる様に◯◯な準備をしてみない?」

などの様に、「もう少しで手が届きそうだ」「これくらいのことならやってみようかな」「そうすればよかったんだ」と思える様なスモールステップを織り交ぜて頂くことを意識してみてください。

学生期は、特に試行錯誤の繰り返しだと思います。

そして、試行錯誤の過程には失敗体験がつきものです。

お子さんの性格や価値観、そして帰属行動に合わせた適切なフィードバックを行うことで、失敗経験によってモチベーションを低下させてしまうのではなく、

失敗体験を通じてモチベーションを高め、新たな課題にチャレンジしようとする意欲を支援しましょう。

失敗を未然に防ぐのではなく、失敗体験後のモチベーション維持や向上に向けてのアイデアを一緒に考えてみませんか?

余談ですが、

スマホのソーシャルゲームが好きな子と話していると、良く「ガチャ」の話になります。ガチャを引く事で、強いキャラや強いアイテムを手に入れられゲームを進行させやすくなるというのです。

その大事な「ガチャ」を私に引いてほしいという子がそこそこいます。

ガチャを引く為のコインやら宝石やらを一生懸命貯めて、なぜ最後の部分を人に委ねるのか聞くと、「自分で引くと物欲センサーを察知されて欲しいキャラが出ないから」と言うのです。

ガチャの結果を何者かに操作されているということはないと思いますが・・・それにしても物欲センサーなんて面白い言葉を作ったなあ(笑) と思います。

これも帰属を自分の内的なもの以外にすることで、仮に欲しいキャラが出なかったとしても、「これまでの自分の努力が無駄ではなかった」「自分ではなく、カウンセラーが運が良くなかっただけだ」と思えるので、失敗体験後のモチベーション維持や向上に向けて、無意識に外的要因に帰属しているのかなと思います。

この様に、ただ「ゲーム」をしているだけの様に思える場合でも、ゲームへの姿勢からお子さんの帰属意識が見えてきて面白いですね。

今回も最後までお読み頂きありがとうございました。

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(*1) 『失敗のモチベーションに対する影響について ー帰属理論の観点からー徐 毅菁』 より引用