不登校解決現場レポート

不登校は繰り返される?A君の事例から考える、二回目の不登校?!

こんにちは。

不登校支援センター東京支部の椎名愛理です。

年末が近づき、皆さん大掃除や新年を迎える準備でお忙しい時期でしょうか。

我が家も、年末の大掃除と題して、日々怠っていたこまごました家事に追われる日々です。

さて、この時期は「この一年どんな年だったのか」と振り返る時期でもあるかと思います。
今日は、2021年に大きな変化を経験したA君の成長について、皆さんと共有したいと思います。(A君とA君のご家族には、このエピソードをお話させていただくこと許可をいただいております)

不登校の始まり~期待に応えなければと頑張っていたA君~

A君と私が出会ったのは、今から3年ほど前、A君が中学3年生の頃でした。

小学生時代はお友達も多く、外交的で人当りがよいことから周りから頼られ、小学校生活を楽しんでいたA君。
小学校は6年間皆勤賞で、親御さんも「うちの子が不登校になるなんて、まったく考えていませんでした」と仰るようなお子さんだったそうです。
しかし、中学に入ると少しずつ環境や人間関係に対して、A君自身の感じ方が変わっていったそうです。

「みんなが自分を頼ってくれるけど、自分がプリントを見せてとかノートを貸してと言うと、みんないい顔をしない」
「先生も自分に周りの子の面倒を見るように言ってくるけど、頼られることに疲れた」

と、少しずつ周囲の期待や周りから求められる行動の多さが疲れに繋がっていたそうです。
中学2年生後半に学校に行くと、頭痛や吐き気に襲われ登校がままならない状態に。
そして中学3年生で、まったく学校に行く事ができなくなっていったそうです。

不登校から登校へ~A君の「気づきと選択の期間」~

私がA君と出会った時期は、中学3年生初旬。三年生と言えば、高校受験を考える時期ですね。

A君のご家族も、A君が学校に行かなくてはいけないという気持ちを持ちながらも、気持ちに身体がついてこない状況を理解され、A君が二年生の間は様子を見守り、サポートをされていたそうです。
しかし三年生となると、今後の進路を考える時期。
少し今までとは異なるサポートが必要になると考えられ、不登校支援センターにご相談をいただきました。

最初は、A君がどのような性格のお子さんであるのか、どのようなポイントがストレスに感じやすいのか、カウンセリングや心理テストを通して皆さんで理解する「状況・状態把握」の時期を設けました。

この時期を通してA君自身

・自分は人に期待されると、一生懸命自分の限界以上に頑張ろうとする傾向があること

・逆を言うと、応援してくれる人がいると頑張れる、という特性があること

・一人で何かもくもくと作業することは苦手かもしれない事

・相手が自分に期待してくれる分、自分も無条件に相手に期待をして、時に裏切られた気持ちになり落ち込むこと

など、様々な気づきを得ていきました。

そして、こうした気づきから

・高校は人が多すぎると、相手に期待したり、期待されたりすることが考えられるから小規模な学校がいい

・体調面の波があることから、全日制ではなく通信制がいい

・自分ひとりで課題を進めるような形式の学校では、勉強や学校生活に対してのモチベーションが保ちにくいから、ある程度集団での行動を重視するような校風の学校がいい

など、進学に向けて高校の絞り込みをしていきました。

新生活スタート!そして、数か月後…

その後のご様子を少し割愛しますが、A君は自分の傾向を知ったうえで、自分にとても合っていると「A君自身が」感じた高校を選び、高校生として4月に新生活をスタートしました。
「この学校は自分が自分に合っていると思った高校なんだよね」と、カウンセリングでも期待感を持って高校についてお話してくれるA君のご様子が、今でもとても鮮明に思い出されます。

新生活が始まって3か月ほど、高校の決められた登校日数もクリアし課題も順調にこなしていることから、A君とのカウンセリングは段々と日を開けて、数か月に一度お話するようになっていきました。
そして今年初め、A君から「予定のカウンセリング時期よりも早めに話がしたい」と連絡をいただきました。
ご予約を早めお話を伺うと「先生、自分また不登校してるかも」と…。
その時のA君は、肩を落とし不安そうで、数年前にA君に会った時を彷彿とさせるようなご様子でした。

A君は最近の自分の状況について、お話してくれました。

「学校は何ともなくて通っている。課題もやってるし(時々提出期限がぎりぎりになることはあるそうです)、友達もできているし、クラブ活動も楽しい。学校の先生も困った時は相談できる。学校じゃなくて、バイトの事なんだけど…」

A君は、高校に入ってからコンビニでアルバイトを始めていましたが、実はバイトに応募して、数週間働くも、続けることができず辞める。という行動を数回繰り返していたとのこと。
「バイト先では、覚えが早いって言って予定よりも早くホール採用でもキッチンの仕事を任されたり、自分より少し後に入ってきた人に作業を教える担当になったり…。最初考えていたよりも、頼られることが多くなることが多い。そうすると、段々バイトに行くのがきつくなって、もう続けられないってなって、バイトを辞めてしまう。なんか、中学で不登校だった時の自分と似ていて、怖くなった」

と、自分の最近の行動が、不登校の時期を思い出されるという不安を教えてくれました。

不登校は本当に繰り返される?A君が二度目の不調を乗り越えた方法とは?!

A君の行動を見た際、一瞬「それはバイトが続かないだけで、不登校とは関係ないのでは?」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、自分の特徴や自分自身の気持ちと向き合ってきたA君は「人から期待されることや、人から自分の能力を認められると、プレッシャーに感じて行動が停滞する自分の傾向」が、不登校だった時の自分と似ていることから、危険を察知していたのです。
A君の行動自体は「不登校」とは言えないかもしれませんが、A君自身が自分の不調に早めに気付き、どうにか軌道修正したいと自ら動けたことは、まさにA君が自分自身と向き合った結果の成長だと言えるでしょう。

その後、A君とは「中学校時代に、どのように不登校という状態を乗り越えたのか」「高校生になった今、学校内ではどのように上手く自分の気持ちと折り合いをつけているのか」など様々なお話をしました。

そして、A君が自分で編み出した二度目の不調との付き合い方は

・バイト先で「シフトを増やせない?」などお願いされると断れないことから、最初から『絶対にこの日は休む』という日を作って、その日はどんなにお願いされてもシフトを入れない

・当初知らされていた業務内容よりも多くをお願いされた時は、今の自分の状況を伝えたうえで、「ここまではできるけれど、これ以上は難しい」と状況を共有する。

(ホール採用なのに、キッチンの仕事もしてほしいとお願いされた場合は「ホールの業務でもまだわからない部分があるので、キッチンの仕事はお皿洗いならばできる。でも、調理までは難しいと思う」等)

という二点でした。

自分を知ることで、防ぐことができる再発

その後、A君は店長さんと「自分のできる範囲」を共有し、無理ない働き方でアルバイトを続けています。

A君のように、学校には通っているものの、そのほかの行動が何となく不登校当時の自分を思い出させる…という状況にあるお子さんも実は多くいらっしゃいます。

・アルバイトが続かない

・友人関係、恋愛関係で思い悩む事が多い

・家族の中で諍い、ぶつかり合いが絶えない

それぞれ、悩んでる分野は異なるものの、根本にはお子さんの性格や行動の傾向が影響していることも多くあります。
不登校という経験から、A君のように自分自身について気づきを得て、その後の生活に活かせる場合もありますので、一年の振り返りの時期と併せてお子さんの傾向やまた親御さんご自身の性格を振り返り、知る機会を設けてみるのもよいかもしれませんね。

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