嬉しいご報告。③ ~A君の辛さとは・・~
こんにちは。
不登校支援センター横浜支部カウンセラーの本沢裕太です。
梅雨入り前に夏日が訪れるという異例な季節を迎えておりますが、皆さん体調など崩されておりませんか?
私はもうバテバテです。(笑)
そんな中、我が家では毎年恒例となった「梅ジュース」の制作に取り掛かりました。
完成まで約1ヶ月かかるので出来上がりが待ち遠しくもありますが、焦りは禁物です!
中の様子をじっくりと観察し、毎日少しずつシロップを全体に行き渡らせる、という「熟成させる」期間が美味しい梅ジュースには必要不可欠なんですね。
皆さんも是非、お試しください。
さて前回は、A君との初対面の時のことを振り返りました。
今回は、「その後」についてお伝えして参りたいと思います。
緊張感も和らぎ、こちらの申し出も受け入れてくれる様子が見られたので、心理検査を行ってみない?と持ちかけると了承してくれました。
これで、A君の「状態」が視覚化できるようになりました。
A君の価値観の優先順位
A君の振る舞いの傾向では、次の点が見られました。
- 人から頼まれたことはきちんとやる
- 何かやる時は、じっくり考えてから行動する
- やりたい事は何が何でもやりたくなる
- 他の人のためになることをやってあげる
一方で、内面の傾向では、次のように見られました。
- 「~しなければいけない」「~してはいけない」という価値観が強い
- 相手に対して寛容、親切
- 環境に対して過剰に適応しようとする、自己の抑制、妥協
「やりたい事は何が何でもやりたくなる」と答えてくれた事について親御さんにもお聞きしましたが、思い当たる点はなく、どちらかというとこれまではとても素直なお子さんだったとの事でした。
A君自身にも聞いてみたところ、
- やらなくてはならないことをやれていないと感じている(学校や勉強関係)
- ゲームやアニメを観てしまっている
- そんな自分をわがままだと思っていると感じている
と話してくれました。
学校という環境の中だけではなく日々の生活の中でも、振る舞いと内面に大きなギャップが生じている点や、周りの認識と本人の認識の違いが生じている点、そしてその事をA君自身が受容できていない点などが、A君の辛さとしてありそうだと感じました。
Aくんの状態や辛さが少しずつ解明される中でも、親御さんの心配ごとは日々訪れます。
例えば、学校の定期試験です。
中高一貫校に通われていたので、中3の定期試験を受験出来なければ成績がつかず、内部進学が難しくなってしまいます。
できれば試験を受けて欲しいという気持ちと、Aくんが心を閉ざさないように関わるにはどうしたら良いのかと、とても葛藤されていました。
心理検査の結果も踏まえ、どんな声掛けがA君にとっては心地が良さそうかということについて一緒に考えさせてもらったおかげもあり、親子間のコミュニケーションも増えてきており、A君の表情も以前より豊かになっていましたし、訪問ではなくカウンセリングに来てくれる様になっていました。
ただ、A君は定期試験を受けには行きませんでした。
それにより内部進学は難しいと学校からも通達されます。
親御さんも、「どうして?」というイラつく気持ちと、期待していた分、落胆してしまった気持ちをカウンセリングでお話されつつ、それでも毅然とした態度でA君と接するよう心がけて、進学先を検討されておりました。
ところが、通信制高校の合同説明会を親御さんが見つけて、予定を立ててみても肝心のA君が直前になって「行きたくない」と言い出したり、何とか説得をして連れていっても反応が芳しくなかったりと、進学先を決めるのも一苦労でした。
その頃のA君は、気持ちが不安定なのもあり、言葉数が少なくなる時もありました。
もともと「すごいおしゃべり」という訳ではなかったので、絵画療法を提案した所、絵を描くのは好きだと言って、色んな絵を描いてみせてくれたのです。
時には、時間いっぱいまで描いていたり、上手に描くコツも教えてくれました。(サービス精神が旺盛なA君らしいです。)
家でも、絵を描いている時間が多くなってきており、出来上がった絵を親御さんにも披露してくれていたそうです。
その頃、印象的だった出来事があります。
A君のチャレンジ
「実は・・・」と話始めてくれたのですが、あるアニメのキャラクターをデザインした法被を製作しようと、SNSで募集されていたのを見つけたA君。
それに応募しようと思っているとの事でした。
応募した人が描いた全てのキャラクターがその法被の中に描かれ、購入もできるとの事でとても興味を示しておりました。
私が出会ってから初めて、とても意欲的なA君の様子を感じました。
親御さんも、進学先が決まっていないというご不安もおありでしたが、A君自身がやりたいというなら・・・と、応援する姿勢を示されました。
応募するための絵は何度も何度も描き直したそうですが、やり終えた時の安心感・達成感はとても大きなものだったと話してくれました。
数カ月後に出来上がった法被が届いた時は、持ってきてくれて照れくさそうに見せてくれたことを今でも思い出します。
「成功体験」となった法被作りをきっかけに、A君は自分の将来のことも考えるようになります。
心理検査の結果や絵画療法の見解も踏まえつつ、まずはA君自身はどんな事を大切にしているかを振り返りました。
自分がやりたいと思っていること
- 新しいものに触れる
- 努力をする
- 本当にやりたいことを見つける
自分の中で大切にしていること
- 1つのことを極めたい
- それができた時の喜びを噛み締めたい
- 何かに挑戦して、出来るか出来ないかの緊張感を楽しみたい
という想いがある事を話してくれました。 また、
- 周りの人の目を気にしてしまう
- 賑やかな子が多い所は避けたい
- 毎日登校するのは難しそう
と不安に感じている事も話してくれたので、その条件が満たせる学校を探すことになりました。
続きは次回以降をお楽しみに。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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