「明日は学校に行くよ」と言ってたのに当日になったら行かない理由とは?③~子どもにとって「安全基地」とは~
こんにちは。
不登校支援センター横浜支部カウンセラーの本沢裕太です。
さて前回は、心が健康な状態を保つために、自己受容が必要というお話をさせて頂きました。
今回は、自己受容とはどういった状態なのかを、私なりの解釈も混ぜながらお伝えしていきたいと思います。
自己受容とは
自分を否定すること、または自分を抑圧することと反対の意味だと言われています。
では、どうして自分を否定してしまう、抑圧してしまう様になってしまうのでしょうか。
それは、子どもにとって望ましくない状況を避けるためと考えられます。
子どもにとって望ましくない状況の一つとして挙げられることは「見捨てられること」です。
人間は生物的にも未熟な状態で産まれてきます。
ですので養育者にお世話をしてもらえないと、そもそも生命を維持することができません。
それを本能的に理解しているので、「見捨てられないため」に、起こった出来事の原因を自分のせいのだと受け止めようとする事が多いのです。
そして、そういった出来事が繰り返されるほど、自分を否定する、抑圧するクセを身に着けてしまうのです。
では、自分を否定し、抑圧するクセを身に着けてしまった子どもの考え方は、どういったものになるのでしょうか?
実際にカウンセリングに来てくれている子の話を聞くと
- 評価されなくてはならない (悪く思われてはいけない)
- 上手に出来なくてはいけない (失敗してはいけない)
- 周りの役に立たなくてはいけない
- 周りの期待に応えなくてはいけない
- 周りに迷惑をかけてはいけない
- 自分の意志を表現してはいけない
と、感じている子が多いと感じます。
愛着について
イギリスの精神科医に、親子の愛着について研究した、ジョン・ボウルビィという人がいます。
ボウルビィの研究では、
「安定した愛着が、安定した自立心を形成する基礎となる。信頼されている人間は安全基地となり、その基地に対する信頼度が増大するほどに健康な自立心が育つ」
と考えられています。
またこうも書かれておりました。
「親が子の愛情や養育に対する要求に耐えられず、無視する、叱る、説教する傾向があると、子は愛情と保護を望みながらも無視されるか棄てられるのではないかと不安になり、親の注目と愛情の欲求を増大し、一人で残されることを拒否し抵抗する」
とありました。
(※中野明徳 「ジョン・ボウルビィの愛着理論ーその形成過程と現代的意義ー」より )
この論文を読んだ時に、こう思いました。
不登校とは、「子どもの親に対する愛情や養育への要求」という意味も含まれているのかも知れない。
これは、親御さんの愛情や養育が不足していたということではなく、むしろこれまで存分に愛情を注いでもらった、養育してもらったという実感が子どもにあるからこそ、求めてくるのだと思います。
これまで、辛かった時、悲しかった時、悔しかった時、怖かった時・・・
側で親御さんが安全基地となり、慰めてくれたり、共感してくれたり、励ましてくれた・・・
そういった実感があるからこそ、「学校に行かない」自分を通して
- 評価されない自分
- 上手に出来ない自分
- 自分の意志を表現できない自分
- 周りの役に立たない (と感じている) 自分
- 周りの期待に応えてない (と感じている) 自分
- 周りに迷惑をかけている (と感じている) 自分
を慰めて、共感して、励まし、受容して欲しいのではないでしょうか。
反抗とは
例えば、思春期に見られる親への反抗があります。
親御さんからすると、言うことを聞かなくなった子どもは、とてもショックであり、手を焼く存在にもなりえると思います。
(我が家の息子がちょうどイヤイヤ期に突入しており、何をするにもとにかく「イヤイヤ」なので、手を焼いておりますが・・・)
この「反抗する」という行動は、実は「反抗しても親に見捨てられることはない」という信頼関係がないとできません。
カウンセリングの中で親御さんからお聞きする話をいくつか取り上げてみますと、
- 初めてのことなので、どの様に対応すればよいのか分からない
- 親に反抗するのは、親の躾が悪かったからではないか
- 子どもが自信を持てないのは、親が手を出しすぎてしまったからではないか
- 親の対応が子どもの自尊心を傷つけてしまったのではないか
といった内容がございます。
このように子どもの不登校をきっかけに、親御さんが自信を無くされており、信頼関係が無いと感じられている事が多い様に思います。
子どもが不登校になり、養育不安のお気持ちが強まるのは、当然だと思います。
これからどうなるのかというご不安もおありでしょうし
今よりも悪化した状態にさせたくないというお気持ちもおありでしょう。
そう思うと、間違ったことはしたくないな、失敗はしたくないなとお感じになられるのではないかと思います。
それだけ子どもの事を想い、子どものためにどうするのが良いか、と一生懸命考えていらっしゃる証だと思います。
ただ、子どもは学校生活の中で、これまで感じられていた安心感が欠如したり、1人で出来ていたことができなくなったり、些細なことに過敏になるなど、情緒的に不安定になっている状態でもあります。
ですので、親御さんにはまず、その気持ちを受け止める安全基地でいて欲しいと願っております。
上記の様に、子どもが反抗的な態度を取ってきた場合は、「大丈夫!これまでしてきたことは間違ってなかった!きちんと信頼関係が築けている」と考えてみてください。
そして、アクションに起こす前に、子どもの気持ちを一度受け止めてみてください。
子どもの反応が今までとは違うはずです。
親御さんが安全基地で居続けられる様に、私たちも支援してまいりたいと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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