【カウンセラーが解説】不登校状態の子ども自立させる方法とは?
こんにちは、不登校支援センター横浜支部の安則芳郎です。
本日は各ご家庭の大きなテーマの一つである「自立」について考えていきたいと思います。
皆さんは自立という言葉からどんな言葉をイメージされますか?
- 経済的に生計をたてられていること
- 人に頼ることなく、一人で生きていくこと
- 大人になっていくこと
などなど、正解というものはないかもしれませんが「子育ての目標は自立だ」という言葉を聞くこともあるくらい親御さんにとってはとても身近な、そしてまたとても大きな、時に苦しめられる言葉のように思います。
不登校状態から自立できるようになるのか不安
お子さんが不登校の状態にあると
- この子は将来自立していけるのだろうか
- このまま部屋に引きこもってしまって、ずっと親のもとを離れられないのではないか
- 親がいなくなったらこの子はどうやって生きていくのだろう・・・
など、親御さん自身がお困りになり、不安や心配を抱えていてもたってもいられないような気持ちになることもあるかと思います。
このように親御さんが思うのは当然のことだと思いますし、その気持ちに寄り添いながら、どのようにして子どもたちの自立を促していくかを検討していくのがカウンセリングの大きなテーマだとも思っています。
一方でそのやり方はとても難しく、きっと各ご家庭、日々試行錯誤の連続です。
先日もあるお母様から以下のようなお悩みをお聴きしました
「うちの子、本当に母親離れが出来なくて…小学6年生の時までは一緒の部屋で寝ていたんですけど、今度中学生にもなるしこのままではよくないんじゃないかと主人と話しまして。中学生になったら一人部屋を用意してそこで寝てもらって、もちろん勉強もそこでやってもらおうかなと思ってたんです。
それで実際にやってみたら、逆に甘えがひどくなって。もちろん中学に入ったっていう環境の変化もあったと思うんですけど、どうも見ていると一人部屋になったことが相当ストレスになっているみたいで。
学校にも行かなくなりがちだし、不安定な状態が続いているんです。
今はまた同じ部屋で寝るようにしているんですけど、いつまでも親とべったりだといけないんじゃないかなって。かといって突き放すのもどうかと思いますし・・・」
→上記のケースでは子どもに自立してほしいという親御さんの思いから環境面を整えることによって子どもが自立するように促したケースであると言えます。
しかし逆に甘えがひどくなったという結果になってしまいました。
だから今はもう一度同じ部屋に戻しているということですが親御さんとしては複雑な思いを抱えられています。
- いつまでこの状態が続くのだろう
- このまま甘えさせているだけでいいのだろうか
- もっと親として、子どもが一人でしっかり生活できる環境を整えた方が良いのではないだろうか
まさにこのような葛藤に苦しめられる状態になっています。
では、子どもが将来しっかりと自立していくために今大切にしたい考え方とはどのようなものでしょうか。
心理学者:河合隼雄先生の言葉
「自立ということは依存を排除することではなく必要な存在を受けいれ、
自分がどれほど依存しているかを自覚し、感謝していることではなかろうか。」
河合先生はこのようにおっしゃっています。
ここでは自立と依存の関係ということについても言及しながら自立とは何かということが綴られています。
私はこの言葉にはとても深い意味が込めれていると思います。
依存することは悪いことではないという言葉も耳にする方はいらっしゃると思います。人はみな一人では生きていけませんし、何かに依存しなければ生きていけません。
しかし河合先生は続けて、自分がどれほど依存しているかを「自覚」していることが大切だと説き、さらには「感謝していること」こそが自立した状態だと述べています。
依存自体は悪いことではないと思いますが、依存していることに気づかずそれが当たり前だと思ってしまうことは危険な事です。
親がこれだけやってくれるのは当たり前。
他者が自分のためにしてくれることは当たり前。
などなど、自身が何かに依存していることに気づかないままの状態だと、逆に満たしてくれなくなった時に「不満」や「不平」「わがまま」といったことにつながってくることでしょう。
しかし依存していることを「自覚」し、そこに「感謝」の気持ちを持てば、おのずと人に対しての接し方は変わってくるはずです。
これだけ周りが自分のために動いてくれている。満たしてくれている。
→本当に助かっている。ありがとう。
→せめてここからは自分でやっていかなければ。
ここまでうまくいくかどうかは難しい所かもしれませんが真の意味での自立とはこういったプロセスで進んでいくものと考えられます。(かくいう私自身が感謝の気持ちをしっかり持って自立的に生きられているかというと本当にまだまだな所ですのでここは自分自身の成長・戒めのためにもこのブログを綴らせていただいています)
ドラマ『半沢直樹』に見る「感謝と恩返し」
『半沢直樹』というドラマ(続編)がありますが、そのドラマのセリフの中で
「大事なのは感謝と恩返しだ。この2つを忘れた未来は、ただの独りよがりの絵空事だ。これまでの出会いと出来事に感謝をし、その恩返しのつもりで仕事をする。そうすれば必ず明るい未来が開けるはずだ。」
という何ともシビれる言葉が飛び交っています。
さらには半沢直樹の宿敵・大和田常務の
「施されたら施し返す、恩返しです!」
などのセリフも話題になっています。
二人にどのような背景があってこのセリフを言っているかについてはもっと深い考察が必要ですが、少なくとも言葉だけを見ると
「自分がどれほど依存しているかを自覚し、感謝していること」を成しているのではないかと思います。
ご家庭の中で意識していただきたいこと
少し話がそれてしまった感がありますが、自立のために大切なのは子どもたちがいかに「感謝」や「恩返し」の気持ちを持てるかどうか、とも言えるのではないかと思っています。
親子・家族という関係はある意味とても特殊な関係です。
それは切ろうとしても切れない固い絆で結ばれた関係であり、たとえ離れて暮らそうとも共に生きていく関係です。
だからこそ本来、配慮や気遣い、そしてお互いへの感謝を忘れないことが求められるのではないでしょうか。
そして親御さんには是非、配慮や気遣い、感謝を伝える姿勢をお子さんへの良きモデルとなって伝えていただきたいと思っています。
そうすることでお子さんとの間で感謝の交換や感謝の連鎖というものが起きてくるからです。
「言うのは簡単だけど、それをやるのがどれだけ難しいことか」
私も人への配慮や気遣い、感謝を忘れないこと、良きモデルになることの難しさを日々かみしめております。親御さんの苦しみは想像を超える程大変なものであるとも思います。
ですのでそんな時こそ、その困難や苦しさを共に分かち合いましょう。
これはドイツの詩人、ティートゲの言葉で色んな場所で引用されるものですが『喜びを人に分かつと喜びは二倍になり、苦しみを人に分かつと苦しみは半分になる』というものがあります。私たちカウンセラーも似たようなところがあります。
お子さんの自立という大きな目標にむかって苦しみも喜びも分かち合う存在でありたい。そう願っておりますので、何かありましたらお気軽にお問い合わせください。
それではまた。
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