不登校のキーワード「劣等感」をどう捉えるか?
こんにちは、不登校支援センター横浜支部の安則芳郎です。
突然ですが皆さんは、自分が人と比べて劣っているなと思うことはありますか?
あるいは自分の理想に対してまだまだ追いついていないとか、過去の栄光と比べて
今の自分がすごく落ちこんでしまっていると感じるなど。
ちなみに私は自分自身の容姿についてそのように思うことがあり、何年もの間苦しんできました。
今回はそんな「劣等感」についてのお話です。これは不登校とも密接な関りがあるキーワードだと思われます。
劣等感を抱くと、、、
ひとたび劣等感を抱くと、周りから「大丈夫だよ」「なんの問題もないよ」
などと声をかけられても自分自身では納得できないことがしばしばです。
学校という場に当てはめて考えると、例えば勉強や友人関係、運動、容姿などに劣等感を感じ、
不登校や引きこもるという行動に移ることがあります。
そしてこれも大事なポイントですが、劣等感を抱き不登校になる子の心理として
- これ以上傷つきたくない
- せめて家にいれば家族に守ってもらえる
- 家族の前では優越感を感じられる(いわゆる内弁慶タイプ)
などもあげられるかと思います。
本当はこのままじゃいけないとわかっている。でも、、、
よくよく話を聴いていくと
「本当は今のままじゃいけないと思っている」
「もっとこうなりたいという理想の姿がある」
などはカウンセリングの中でもよく耳にする言葉です。
考えてみれば当然で、劣等感というのはその反対側に理想というものがあり、
理想があるからこそ生まれてくる感情です。
ですので、なんとか現状打破したい気持ちを持っている子どもは非常に多いと言えます。
「じゃあ、やればいいのに」
こんな風に思う親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか?
- 勉強についていけない → じゃあ少しでも勉強すればいいのに
- 運動が苦手 → 少しでも練習してうまくできるようになればいいのに
- 自分、コミュ障だから → そんなこと言ってる暇があるなら人と話す場に行けば?
などなど「だったらやればいいのに何故やらないのか」ということに疑問を抱くこともあると思います。
しかし理屈ではわかっていてもなかなか行動に移すことが出来ないのは人の性でしょうか。
どうも理想(理屈)にあらがう負の感情が邪魔して動けない時があります。
いわゆる葛藤状態にあるということです。
葛藤とはやっかいなもの
葛藤とは非常にやっかいなもので、以下、私自身の事例に当てはめて考えますと
自分の体型に劣等感を感じた私は、これを克服するためたくましい体になりたいという思い(理想)を持ちました。
だからそれに必要な筋トレをすればいいと思っているわけです(わかっているわけです)。しかし、、、
筋トレって辛そう。
→結果、あきらめて現状維持。
このように、理想はあるけどそこに行きつくまでの道のりがきつそう、辛そうと思い
結果あきらめてしまうようなことがあるのですね。
葛藤状態にありますので、この状態を保つこともそれはそれで辛いものになってきます。
不登校のお子さんも同じような思いを抱いている可能性があります。
「勉強についていけないから、少しずつでも勉強しておいた方が良いよな。わかってる。わかってるんだけど、、」
「自己主張が苦手だから、もっと言えるようになった方がいいんだろうな。わかってる。わかってるんだけど、、」
ですが、そこを乗り越えていくためにはその先に待っている茨の道を歩んでいかなければなりません。
これには相当強い意志や勇気が必要になってくるものと言えるでしょう。
劣等感を克服する勇気を持つためには「共感」が不可欠!
では、この果てしない道のりを乗り越えていく意志や勇気を持つために、親御さんがお子さんに対して出来ることは何でしょうか?
私はその一つの答えとして「共感」が挙げられると思っています。
共感の定義は突き詰めて考えるととても難しいものです。
例えばある心理学では、
「共感的理解とは、相手が考えているように考え、イメージしているようにイメージしようと努め、相手の主観的な見方、感じ方、考え方をあたかもその人のように見たり感じたり考えたりすること」
などとも言われます。
しかしこれを親子関係の中で実施していくのもなかなか難しいことだと思います。
そこでお勧めなのは
「自分自身の体験と照らし合わせてお子さんの気持ちを想像してみる」ことです。
どういうことか、例を挙げてお伝えしたいと思います。
●いや~、飲み過ぎると次の日きつくなるからやめた方がいいんだけど、ついつい飲んじゃうんだよね~
→いや~ゲームのやりすぎはよくない事はわかってるんだけど、なかなかやめられないんだよね~
●も~、部屋の掃除した方が良いのはわかってるんだけど、ついつい午後のティータイムを優先しちゃうのよね~
→も~、勉強しなきゃいけないのはわかってるんだけど、ついついゲームを優先しちゃうのよね~
など、このようにして自身の体験と照らし合わせて考えていくと少しその子の気持ちがわかる気がしませんか?
葛藤を抱えるお子さんに対応するうえでは、このように「わかっちゃいるけどやめられない」「やればいいのになかなか手につかない」ことに対して共感的理解に努めることが重要です。
このように共感的理解に努めることで
「こんな気持ちになるのは自分だけじゃないんだ」「自分をわかってくれる人が側にいるんだ」
と孤独感の解消や共に歩む人がいるという優しく温かい気持ちに包まれていくのです。
こういった心の状態になった時こそ、人は一歩を踏み出そうとする勇気を持ちます。
もちろん、親御さんとお子さんの立場も責任のとれる範囲も違いはありますので、すべてお子さんの気持ちになって
それを認めるのは難しいかもしれませんが、少しでもお子さんの心理に近づくためにまずは自分の心や普段の行動に向き合ってみることは意味あることだと思います。
最後に
今回は不登校と密接な関りのある「劣等感」について挙げさせていただきました。
劣等感を持つこと自体は決して悪いことではなく、むしろ行動の原動力になることもある要素だと思います。
その劣等感を、
・克服しようと努力する
・隅(すみ)に追いやっておく
・受け入れ、耐える
・そもそも劣等感を感じていることは間違いだと解釈する
など、人によっては様々な取り扱い方があることでしょう。
まずはその劣等感を持つようになった背景や、理想を追求する際に生まれる葛藤などについて
共感的に理解を示し、ご家族を含む周囲の方々が一体感をもって乗り越えようとした時に大きな変化につながると感じています。
カウンセラーとしてもお子さんや親御さんの気持ちに寄り添いながら
目指す姿の実現のお手伝いをしたいと願っておりますので、何かありましたらお気軽にお問い合わせください。
それではまた。
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