家の外では一言も話せないお子さんへのサポート~大切にしたい心がけ~
こんにちは。
不登校支援センター大阪支部の桒原航大(くわばらこうだい)です。
本日も、日々、カウンセリングをしている中で出会うテーマについて取り上げていけたらと思いますが、今回は「家の外では誰とも話すことができない子ども」へのサポートについて、心がけていることをご紹介できたらと思います。
家の外では誰とも話すことができない
家ではリラックスして普通に話せているのに、学校やカウンセリングの場など、お家以外では全く話せないという事情を抱えた子どもがカウンセリングに来ることもあります。
学校で先生がコミュニケーションを取ろうにも、話すことができずに、うつむいたまま時間が過ぎてしまうという経験や、クラスメイトから遊びに誘われたのに返事ができないという経験をしている子も多いようです。
親御さんとしては、家では普通に話すことができているので、「なぜ?」とそのギャップにより戸惑いを感じるのも無理はないかもしれません。
- 家族以外の人との関係づくりがうまくいっていないのかな。
- 話せるようになったら、もっと楽になるだろう。
- どうやったら、話せるようになるのだろう。
など、話せないつらさを感じることができるからこそ、何とかしてあげたいという気持ちも強くなるかもしれません。
では、カウンセリングでは実際にどのようなサポートをしているのでしょうか。
話せないことを原因にしない
確かに、家では普通に話せるのに、外では話せないとなると心配になるのは当然かもしれません。
そして、学校を休んでいるという状況も重なれば、家の外では話せない事と、学校を休んでいる事が、原因と結果のように、あたかも因果関係があるように感じられるかもしれません。
というのも、人は、注目したものをある事柄の原因として過剰にとらえる傾向があるそうです。
本当は因果関係はないにも関わらず、誤解をしてしまうそうです。
今回のケースで言うと、外で話せるようになれば、学校に行けるようになるはずなので、そのために外で話せる練習をしよう、というような理解ですね。 そうなれば、私たちはその原因を何とかしようと外で話す練習に一生懸命になるかもしれません。
しかし、実際には、話すことができなくとも、復学をしていったお子さんもいますので、話せない事を学校に行けない原因とするのは、少し極端なのかもしれません。
さらに、仮にその原因を何とかしようと一生懸命になればなるほど、どんな状況が生まれるでしょうか。
もしかしたら「話せない事=悪い事」という気持ちが子どもの中に強く芽生えるかもしれません。
また、大事なこととしては、子どもは話せないからといって、話したくないとは限らないということです。
「話せない=話したくない」とは限らない
実際にカウンセリングに来ていた子どもの中にも、場面緘黙のように話せない子どもは来ています。
ただ、こうした特定の場面で話せなくなる症状というのは、不安を感じやすい気質やストレスが関係しているといわれていますが、現在もその詳細なメカニズムはまだ解明されていないようです。
ですので、話せないからといって話したくないかといえば必ずしもそうではなく、カウンセリングでも、紙に書いたり、ジェスチャーで応えてくれたり、スマホに文字を打ち込んでくれたり、いろんな形で自分の気持ちを一生懸命伝えようとしてくれています。
言葉以外にも、伝える方法というのはたくさんあるんだな、ということをそのたびに実感します。
そして、私もそうした場面では、話して伝える方法をその子に勧めずに、その子が伝えやすい方法でコミュニケーションを取りながらカウンセリングを進めています。
話すことができない子どもにとって、話すことを強要されない空間というのは、心にゆとりをもって自分と向き合える時間にもなっているようです。
そして、そのカウンセリングの時間では、話せないことばかりに焦点を当てるのではなく、
時にその子の悩みに寄り添い、またその子の変化、成長の喜びを共有したり、今まで気づいてなかった自分らしさを発見したりしながら、その子の自信につながるようなカウンセリングの時間を大切にしています。
できないことを直していくことが、前に進む唯一の方法ではありません。
人それぞれ、苦手なことはあると思いますが、その一つ一つに過剰に焦点を当てるのではなく、今見えにくくなっているその子らしい魅力を再確認する時間が前に進むエネルギーにもつながっていきますので、参考にしていただけたらと思います。
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