不登校支援で、支援する側が気を付けたいこと②
こんにちは。
不登校支援センター横浜支部 カウンセラーの本沢裕太です。
緊急事態宣言の期間も長くなり、「それまでの日常」が遠い昔の様な気がしておりますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
良くも悪くも、この生活に慣れてきている様にも思えますが、不満や不便さばかりに気を取られてしまいがちな私なので、改めて気づけた素敵なエピソードをご紹介したいと思います。
またまた我が家の1歳半の「愛らしいモンスター」の話になってしまうのですが、最近ハマっているのが「ゴミ収集車」を見ることです。
家の近くにゴミの焼却場があるもので、その近くまで散歩をしていき、30分近く収集車が出たり入ったりするのを眺めては
「あー!しゅうしゅうしゃ!」(最近ようやくそれっぽい発音になってきました。笑)
と叫んでいるのですが、その様子に気付いてくれた乗務員の方の中には、笑顔で手を振ってくれる方もいらっしゃいます。
自粛が続く中、我が家のゴミの量も大変な事になっておりますが、集積所のゴミの量もいつにも増して多くなっており、収集員の方も大変だろうと思います。
そんな中、心温まるような対応に私もほっこりさせてもらっております。
ただ、手を振ってもらえると息子のテンションが上がり、さらに滞在時間が延びてしまう訳ですが・・・(苦笑)
捉え方一つで…
ストレスとの上手な付き合い方、フラストレーションの上手な発散の仕方の一つとしてよく言われるのが「物事の捉え方」ですね。
お聞きした事がある方も多いかと思いますが、コップに水が半分入っている状態を、「半分しかない」と捉えるのか、「半分もある」と捉えるのかで心の状態は大きく変わってきます。
自粛生活が続く中で、「半分しかない!」と感じることも多いかと思いますが、1つでも2つでも「半分もある~♪ 」と感じられることを探してみてください!
さて前回は、「終わった後に不快感が残る残念な関わり」が続くことによって表れる症状を事例を交えてご紹介いたしました。
今回は、別の事例を紹介する前に・・・
このブログを読んでくださっている皆さんに一度思い出してみてもらいたい事があります。
それは「クリスマスプレゼント」をもらった時の事についてです。
誰しもが楽しみにしていたイベントではないでしょうか。
私も小学4年生くらいまで、「1年間良い子にしてたらクリスマスにサンタさんがプレゼントをくれる!」というのを楽しみにしていたたちです。
(1年間良い子は、到底無理でしたが…)
面談では色んなお話を聞かせてもらうのですが、クリスマスプレゼントのあげ方もご家庭によって様々です。
最近は、お子さんのリクエストに応える形が多いので主流なのかなと思いますが、私の頃はなかなか自分が希望したものがもらえず、がっかりした覚えもあります。(今の子たち、うらやましい!!)
例えば、「ファミコンが欲しいです!」とサンタさんにお手紙を書いてみても、プレゼントを開けてみると「まんが日本の歴史」だったり・・・(笑)
でも読んでみると、結構面白かったりするんですけどね。
このように、「自分の欲しいもの」と「相手から贈られるもの」がズレる事ってありませんか?
プレゼントであれば、相手の驚く顔や喜ぶ顔を想像しながらアレコレと悩めるのが楽しいですし、例えズレていても一時的な出来事なので「一つの思い出として」終われるのかも知れませんが、これがプレゼントではなく「普段のコミュニケーション」でも頻繁に起こっていたとしたらどうでしょう。
「求める側」と「贈る側」にそれぞれどのようなストレスが感じられるでしょうか。
想像しながら、下の事例を読んでみてください。
事例2
小学校高学年の男の子B君は、ゲームがとても大好きな男の子です。
プレイしている様子を見せてもらう事もありましたし、一緒にプレイした事もありますが、初めてのゲームでも飲み込みがとても早く、すぐにやりこなせるようになります。
友達とも一緒に遊ぶし、オンラインでもコミュニケーションを上手に取りながら知らない人とも楽しむ事もできます。
ただ、学校には行かないのです。
B君が言う行かない理由としては
- 家にいたい
- 勉強が嫌だ
- 学校は楽しくない
などでした。
親御さんから、どんなお子さんかお話をお聞きすると
- 自分が納得しないと動かない
- 動くのに時間がかかる
- 勉強はほとんどしない
- 集中力がない (飽きっぽい)
との事でした。
中でも「自分が納得するまで動かない」事に親御さんも困っていらっしゃるようで、外出の予定も直前で「聞いてない!」とか「行きたくない!」と言い出してしまうと、どんな事を言っても動かない事が多く、予定を諦めざるを得ない事が多々あったそうです。
「納得するまで・・・」という気持ちは、ゲーム中にも表れておりました。
1つの動きや技など、自分が思う様に出来るまで何回でも繰り返しやりこみ、親御さんはその情熱を勉強にも向けて欲しい・・・とおっしゃっておりました。
ちょうどクリスマスの時期
「クリスマスプレゼント」の話題になり、「去年は〇〇を買ってもらったんだ!」「今年は絶対〇〇が欲しい!」と話してくれました。
B君のご家庭では、「夜寝ている間にサンタさんがこっそりとプレゼントを持ってきてくれる」という話ではなく、親御さんに直接欲しいものを伝えて買ってもらうというやり方をされておりました。
これまでもB君が要望を言ってきた際には出来る限り応えようとしてきたのは、クリスマスに限った事ではなく、日常的にそういった事が多かったそうです。
もちろん、それだけB君の事を愛されていたのもありますし、希望したものが手に入らないとB君は「納得しないと動かない」モードになってしまい、「親御さんが希望した通りに動かなくなってしまうから」という事と「買ってあげたものが無駄になってしまうから」という理由もあったとの事でした。
この話を聞いて私が感じた事は、このままではB君は「B君の要求に応えてくれる人」としか人間関係が構築できなくなってしまうのではないか、という事です。
親御さんに聞いてみると、今仲良くしてくれている子たちは、B君のやりたい事に付き合ってくれる子や、B君が一人で別の事をやっていても気にせず楽しめる子たちなのだそうです。
仲良く出来る子がいつまでもずっと一緒にいてくれるとは限らないので、これから先、B君が苦労するのだろうと心配されていたとの事でした。
それでは、このまま周りの人がB君の要求に応え続けてくれたとしたら、どんな問題が生じるのでしょうか?
一見、ストレスの少ない時間を過ごせそうですが、自分の思い通りにならなかった際などはいかがでしょう。
- だって誰々がこうしてくれなかったから
- だって誰々にこう言われたから
- だって思い通りにならなかったから
- だってやっても上手くできないから
といったことを言いそうではありませんか?
そうなってしまうと、「問題を解決しよう!」と模索するのではなく、「問題は自分には解決のできないこと」として、
- 自主的に行動しない
- 努力しない
- 他者に関心を向けない
- 自分で責任を取らない
など「正当化する理由」に溢れてしまいます。
上記の状態になってしまうと今度は、
- 学校に行かない自分
- 勉強をしない自分
- ゲームをやる自分
- 友達と仲良くしない自分
- 親の言う事を聞かない自分
を「正当化」するべく行動してしまいます。
そうなってしまわない様に、カウンセリングでは「B君の要望」と「周りができる対応」とのズレを、B君が学習し馴染んでいくことをテーマに進めていきました。
例えば
- 思い通りにならなかった時に、B君はどんな気持ちになるのか(悲しい、がっかり、怒り、脱力、焦り、疎外感、無力感、無気力など)
- 本当はどうして欲しかったのか
- 相手に分かってもらうためには、どのように伝えたら良いか
- 思う様にはならなかったけど、その中でも良かった事はないか
- 今後、似たような事が起こる場合、どんな事ができそうか
などの事を親御さんやカウンセラーと出来る限り言葉に表し一緒に考えたりしました。
カウンセリングが進んでいくと、
- 思い通りにいかなくても癇癪を起さなくなった
- 時間を置くと気持ちを切り替えられる様になった
- イレギュラーに対して寛容な一面が見られるよう様になった
- 他人は、自分の考えとは違う考えを持っている事を受け留め始めた。
などの変化がB君に見られてきましたし、親御さんもB君との関わり方に明確な軸の様なものが出来上がった様に感じます。
今後、クラスで過ごす時間が増えた際、B君が自分とクラスメイトとの違い(容姿、考え方、得て不得手など)をどの様に受け止めていくかが楽しみです。
最後に
今回「プレゼント」というテーマを取り上げさせて頂きました。
「プレゼントの仕方」を通して、日頃のコミュニケーションを振り返るきっかけに少しでもなったら嬉しいです。
せっかく頂いたプレゼントです。
- どんな気持ちで自分にプレゼントしてくれたのだろうか
- どんな気持ちでこのプレゼントを選んでくれたのだろうか
コミュニケーションですと
- どんな気持ちで、自分に伝えてくれたのか
- どんな気持ちで、その言葉を選んだのか
という事に、想いを馳せる一時を作るのも支援者の役割の一つかなと思いお伝えさせてもらいました。
それでは続きはまた次回に。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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