【専門家が考察】宮城県昨年度(2018年度)の不登校生徒数から見る実態と怖い点
こんにちは。不登校支援センター仙台支部の上原です。
今年度も残すところわずかとなりました。
今回のブログでは、実数データを元に、不登校問題に関する検証を行ってみたいと思います。
宮城県の不登校生徒数
文科省が発表した宮城県の不登校児童・生徒数は3867件でした(2018年)。
これは小中学校が対象で高校生は含まれておりません。高校生を含めると恐らく5000件を超えてくるでしょう。この数字をみて多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれかもしれません。これは全国平均的には多い数字となります。
そもそも宮城県は不登校の数が多いことで有名です。全国でワースト1位をとったこともあり、その後もずっと上位に居続けています。
なぜ、宮城県では不登校の数が多いのか?
色々な意見がありますが、先日1つの要因を見つけましたので共有させて頂きます。
宮城県の不登校が多い要因
皆さんはご自身の子どもが不登校になったら、どんな対応を考えますか?
話を聞く、原因を探す、学校に相談する、病院に連れていく・・・など、対応は色々あると思います。
実は宮城県では、学校以外の機関に相談する方が少ない傾向があることが分かりました。
例えば、我々不登校支援センターで検証しているデータの一つを紹介します。
東京では不登校の生徒数がおよそ2万人弱。それに対して不登校支援センターをネットで調べて、ホームページを見に来てくれている数はおよそ2万件。ほぼ等倍程度の数字でした。
それに対して宮城県はおよそ4千人弱に対して2千人弱でした。
もちろん支援機関は多数ありますし、不登校支援センターを調べて、来なければダメということではありません。
ですが、不登校支援センターの名前を知らずとも、『不登校を支援している機関』について検索をすれば、間違いなく上位に表示されるのが不登校支援センターです。
そのため、ホームページを見てすらもいないという方が、宮城県には意外にも多いことが分かりました。
不登校支援についての情報収集
当たり前の話ですが、ホームページを見るだけならばお金も時間もはかかりません。今はスマートフォンなども普及しており、閲覧することは簡単です。
初回面談の予約など、実際の行動は取らないにしても、
- どんな相談機関があるのか?
- そこではどんな支援をしてくれるのか?
そういった支援の手段を、模索することをしていない可能性があるんですね。ですから、今このブログを読んでいる皆さんは、宮城県の中では情報収集において優秀な方々ということになります。
そんな大したことしてませんよ?と思われるかもしれません。
ですが「その大したことではないことも、やっていない人が多い」という可能性があるのです。
私はそこに宮城県の不登校が増え続けている要因を感じました。もちろんそれだけが要因ではないでしょうし、様々なことが重なっての実態だと思います。
ただ調べることをしないのか、もしかしたら調べるという発想自体がないのかもしれません。
そしてこれが事実だとしたら、私はもう1つ怖い可能性に気づいてしまいました。
続けて、その怖い可能性についてを考えてみたいと思います。
当事者以外はもっと・・・?
先ほどのデータを考えるにあたって、1つ抑えておきたい点があります。
それは「不登校支援センターのホームページを見に来るのは主に誰だろう」という点です。
これは簡単に思い至るでしょう。当然、不登校の子どもを持つ親御さんです。
ですがそれ以外にも閲覧されるかたはいらっしゃいます。
- 不登校の関係者
- 学校の先生
- 支援する立場の方
などがそれに当たります。
センターではこういったブログをはじめ、情報を隠すことなく多く提供しています。それを誰でも見れる形で置いてありますので、様々な立場の方が見てくださいます。
もちろん多くは不登校の子どもを持つ親御さんがセンターのホームページを見てくださっていますが、それ以外のかたもいらっしゃるんですね。
そこで先ほどの怖い可能性のお話です。
不登校支援センターのホームページを探し、閲覧される方は
- 「不登校 対応」
- 「不登校 理由」
等、不登校に関係する言葉を組み合わせて、調べて来られます。これは親御さんも周囲の方も共通でしょう。
そして検索の結果、不登校支援センターのホームページにたどり着いてこられる件数は、宮城県の方は東京の半分。
不登校支援センターのホームページは、検索すれば上位にあるので、見られる可能性は非常に高いです。つまり「そもそも検索していない」可能性があるのは上でお伝えした通りです。
私が怖いな、と感じたのはここです。
つまり「親御さん以外の方が情報収集に疎い」可能性があるということですね。
もちろん不登校の対策を考える際に、まずSCに相談する、担任の先生などであれば主任に相談する、などあると思います。
でもそれで解決しなかったり、長期化した場合「ほかにどんな手法があるかな?」と調べることくらいはするのではないでしょうか?
ですがそれが少ない。圧倒的に少ない。
一番真剣に考えていると予測される親御さんですら半数程度です。当事者から少し離れた周囲の方はもっと少ないでしょう。
外部の知識を用いない場合、どうするかというと「根拠の薄い自分なりのやり方」を続けることになります。
自分はこれが正しいと思う。今までこうやっていたからそれを続ける。
そんな行動になっていくでしょう。
あるいは上からの通達で「このように対応していきましょう」という方針がしっかりと共有されている。それに基づいて個々の先生方や支援員さん達が自信をもって、対策を実践してるのならば問題ありません。
ただ現場で実際に親御さんからのお話を伺うと、そこまで出来ている例というのはあまりないように感じます。
私はそこが怖いと感じてしまいました。(実際、宮城県の不登校数はずっと上位のままです)
支援する立場として
改めてこれらのデータを見て、私はもっと宮城県内の不登校支援センターの周知を進めていく必要があるな、と感じました。
単純に「こういう相談をする場所があるよ」ということすら知らない人が多い可能性があるからです。
これは東北特有なのかもしれませんが
- 誰かに話す
- 誰かに相談する
ということの抵抗感が強いのかもしれません。
自分なりの方法で試して上手くいかないと、そこで止まってほかの可能性を模索せずに終わってしまう。
これは非常にもったいないことだと思います。今この文章を読んでいる方には、恐らく当てはまらない話ですね。
ですが、周囲の子どもに関わっている皆さん以外の方はそうではないかもしれません。
だからこそ支援する立場としてもっと情報などを広めていきたいと感じました。
毎月開催している無料のセミナーなどもほかの地域を比べて不登校支援センター仙台支部は参加者が少ないです。
(2020年3月セミナーは、コロナウイルスの影響を鑑み開催を見送らせていただきました。申し訳ございません)
これも地域性なのかもしれませんが、それで終わらせるわけにはいかないだろうと思います。
これからは新たな試みなども実施し、皆様により情報が届きやすい、得やすい形を目指していこうと思います。
努力して参りますので、今後ともよろしくお願い致します。