不登校専門カウンセラーが教えるコミュニケーションに欠かせない『返報性の法則』とは?
こんにちは。不登校支援センター東京支部の椎名愛理です。
段々と春が近づき、大人も子供も新しい環境に胸を躍らせたり、緊張したりする時期になってきましたね。
春は出会いと別れの季節。
今日は、新たな出会いについてとても緊張していたAさんが、新学年になり出会いを楽しめるようになった過程についてお話したいと思います。
「私はコミュ障・・・」コミュニケーションに自信がなかったAさん
Aさんは中学1年生の女の子。
親御さんから見ると、Aさんは人と分け隔てなく付き合うことができ、家庭では笑顔で話す様子も多く、コミュニケーションに自信がないようには全く見えなかったそうです。
しかし、学校を休み始めてから親御さんがAさんと様々なお話をしていく中で、Aさん自身は
- 自分はコミュニケーションが苦手
- 人と(上手に)話すことができない
- 会話を続けることができない
- 私はコミュ障なんだ
と、自分の人との関係性や、コミュニケーションについて苦手意識を持っていることが分かったそうです。
コミュニケーションが苦手なAさんの『大発見』
当初、カウンセリングの時間の中でも緊張し、表情が硬く、言葉を詰まらせながらお話していたAさん。
Aさんとお話をしていると、Aさん自身が
- うまく話さなくてはいけない
- 相手を楽しませなくてはいけない
- 会話に間があってはいけない
等、様々な「こうしないとコミュニケーションが成立しない」という意識を持っていることがわかりました。
それだけ、人と関わることや接点を持つことについて、まじめに考え相手に誠意を尽くしたいと感じていたのです。
カウンセリングの中でAさんは
『どんな相手でも、会話する時に緊張するのか?』
『どんな場面だと、Aさん自身がリラックスしてお話できるのか?』
『ドキドキする感覚はどこからくるのか?』
など様々な方向性から、自分のコミュニケーションについて考えてくれました。
そして
『自分は小さな子に対しては、ドキドキしないで接することができる』
という発見をしたのです。
コミュニケーションに欠かせない『返報性の法則』
では、なぜAさんは小さな子に対して、ドキドキ感少なくコミュニケーションを取ることができたのでしょうか?
そこには『返報性の法則』があるように感じられます。
返報性の法則とは『他者とかかわりを持つうえで自分が相手に対して与えたものが、相手からも返ってくる』という法則です。
例えば
- 自分が笑顔でいると、相手も笑顔になる。
- 自分がイライラしていると、イライラが伝わり相手も不機嫌になってくる。
などです。
Aさんと話をしていると、Aさんには「小さな子には優しくしてあげたい」「同じ目線で話をしたり、話を聴いてあげたい」という気持ちがあることがわかりました。
そして、その気持ちが
- 相手(小さい子)が笑顔で話をするときは、Aさんも笑顔で話をする
- 相手(小さい子)が一生懸命話した事については、「○○と思ったんだね」などAさんも一生懸命話を聴こうとする
- 相手(小さな子)の豊かな感情表現に対して、Aさんも自然と豊かな感情表現をしている
という結果を生み出していたことがわかりました。
返報性の法則でコミュニケーションに自信をつけたAさん
Aさんは、これまでの気づきから
- 「言葉数は少なくとも、笑顔でいてみよう」
- 「自分から話題の提供は難しくても、相手が話した事についてまずオウム返しで答えてみよう」
と、相手から帰ってくると嬉しい反応や言葉を意識して、自ら実践していくようになりました。
そして、新学期。
以前は「コミュ障だから、友達なんてできない」とお話していたAさんですが、コミュニケーションに自信をつけ、ドキドキしながらも新しいクラスでAさんらしく同級生と交わり、関係性を築いていきました。
ではAさんがコミュニケーションに徐々に自信を持ったのは『返報性の法則』のおかげでしょうか?
どちらかというと、法則よりも『自分がドキドキしないコミュニケーションはなんだろうか?』と考え、『小さい子とならば気持ちよく接する自分がいる』ことをAさん自身が発見したことが大きかったように思えます。
小さな発見のように思えますが「自分にとっては大発見だった」と新学期を迎えてから、Aさん自身振り返ってお話してくれました。
このような発見は、子ども一人で見つけることが難しく、また発見をサポートする親御さんとしても、どのように子どもを支えたらよいかお悩みなことかと思います。
一緒に考える人や目が多いほど、新たな発見や気づきは多くなるものです。
私たちカウンセラーも皆様と一緒に「小さな発見」をしていきますので、お気軽にお声がけくださいね。
関連ワード: カウンセリング , コミュニケーション , 不登校 , 不登校支援センター東京支部 , 周囲がしてあげられること , 子どもとの関わり方 , 子どもの気持ち , 子どもの状態 , 適切なアプローチ