お悩み解決「一問一答」不登校解決現場レポート中学生の不登校子供の心理学

安全維持状態の子どもについて~状況から考える子どもへの対応方法~

皆さん、こんにちは。不登校支援センター福岡支部の永島です。

これまでのブログを通して、状態別の不登校対応方法についてお話しをしてまいりました。

家庭内回避傾向について~状況から考える子どもへの対応方法~

社会回避傾向について~状況から考える子どもへの対応方法~

社会接近傾向について~状況から考える子どもへの対応方法~

今回はその中でも、『安全維持』状態の不登校対応方法についてお話ししていきます。

安全維持状態とは?

学校生活や、家庭環境などにおいて辛いストレスを感じていた子どもが、それらのストレスから開放されたとき、その生活環境を維持することを優先させる状態です。

学校に行かなくなり始めて、学校を休むことで自分が楽になった(辛い思いをしないで良くなった)など意識的・無意識的に実感し始めたときなどが、この状態に当てはまります。

この安全維持状態にある子どもの状況としては、次のような例があります。

  • 親(家族)へのコミュニケーションが増える(特に母親に甘えたりなど)
  • 簡単な要求をしてくるようになる(「今日〇〇が食べたい」や「〇〇買ってきて」など)
  • 外出を避ける
  • 学校の話題を避ける
  • 生活習慣などで、新しいことを始めることを避ける
  • 家の中では普通にふるまえる
  • 部屋から出てくる頻度が増える

などなどです。中には通常の子どもでもよく見られるふるまいもありますね。

つらい思いが少ない生活を手に入れたので、できるだけその生活を守りたいと感じ、変化の可能性をとにかく避けます。

夏休み明けなど、長期休暇明けも同じような状態になることがあります。

安全維持状態の対応方針

安全な生活を守ることに意識が向いてしまっているので、その間は次のステップに進むことには意識がいきません。

なので、対応方針としては、

『子どもが安心して生活できる環境作りをサポートする』

ということになります。

子どもが「自分が抵抗しなくても、この安心できる環境は維持できるんだ」と感じられる状態を目指します。

落ち着いてきて、見た目にも余裕ができてきているように見えてしまいますが、この状態のときに「勉強だけでもやってみない?」などと提案してしまうと、子どもは安心安全な生活が崩れるかもしれないと感じてしまい、状態を悪化させてしまうことがあります。

【参考事例】ある中学校1年生の女の子Bさん

Bさんは中学校入学時は普通に登校できていたのですが、明けからポツポツ休み始め、夏休み明けから行かなくなってしまいました。

最初は頑なに登校することを拒絶していたので、お母さんも「無理やり行かせようとするのは良くない」と感じ、学校に行かせようとする接し方を止めました。

すると、1か月が過ぎたころから落ち着き始め、家ではお母さんとのコミュニケーションも増え、Bさんの心理状態としても安定してきました。そのままさらに時間が過ぎて、安定している状態は保てていました。

ですが、逆に何も変化がみられないことにお母さんは不安を感じ始めました。

そこで、お母さんはBさんに「勉強とかしてみない?」と提案しました。

Bさんは「うん。そうしてみる。」と答えました。しかし、Bさんはその後も全く勉強することはなく、お母さんがそれについて聞こうとすると、すぐに会話を切り上げ、部屋にこもるようになってしまいました。

そんなときに、不登校支援センターに相談に来られてました。

「学校に無理やり行かせる気はないけれど、でもそれだけではダメな気がするんです。」

ということを話してくださいました。

このご家庭については、次のようなことを意識して対応してみました。

  • Bさんからのコミュニケーションはできる限り傾聴で対応
  • 「暇~」「何をしたら良い?」などの問いかけなどにアドバイスしないようにする
  • お母さんが本当に必要としている手伝いをお願いしてみる
  • Bさんの過ごし方について注意等はしない

このように対応していると、あるコミュニケーションにおいて変化が生じてきました。

それはBさんが「暇~」と言ってきたときに、何もアドバイスしないで傾聴していると、「やっぱり勉強とかしておいた方が良いのかな・・・」とつぶやくように言うことが出てきたことです。

もちろんこのときも傾聴での対応です。

そうするとさらにBさんから「〇〇をしてみたいんだけど、どうかな?」という勉強についての具体的な提案が出てくるようになりました。

具体的な提案が出てきたら、実際にそれを実行できる環境を用意してあげました。環境を用意したからと言って、すぐに実行はできませんでしたが、同じような方針で接し続けていると、徐々にBさんは勉強し始めるようになってきました。

このあとも勉強をし続けるサポートは続いていきますが、それについてはここでは割愛させていただきます。

何が効果的だったのか?

先ほどの事例のBさんについて大事だったことは、「自分から変化を望むようになる」ということです。

これは、「辛いストレスから解放された生活を維持すること」に費やしていたエネルギーを、

「今の状態から何とかして脱出すること」に費やそうと思えるようになったということです。

ここでお母さんの方から、「今の状態から何とかして脱出する」ということをさせようとすると、同じことでも「辛いストレスから解放された生活を奪われること」と子どもには感じ取られてしまいます。

なので、もし親の方からアプローチをかけるとしても、そのタイミングを見分けることがとても重要になります。

このBさんの場合は、「きっと自分から変わりたいと思うようになるだろう」とわかっていたので、今回のような対応をしたのですが、中には親御様の提案がなければ「今の状態から何とかして脱出すること」を考えることができない子どももいるので、その子どもにあった対応方法を見極めていくことも必要といえるでしょう。

最後に

同じ方針を持つとしても、具体的な対応方法はご家庭、子どもの性質によって異なります。

学校を休み始めたり、良くない親子関係が改善したりしたときは、このような『安全維持』状態になることが多くあります。

そのときは、『自分がエネルギーを費やさなくても、この安全な状態は維持されるんだ』と子どもが心から思えるように、周りが接していくことが大切なことになります。

そうすることで、休んで蓄積されているエネルギーを、新しいこと、自分のより良い変化に向けることができるようになります。

もし、「子どもが落ち着いて過ごしているように見えるが、そこからどう対応したら良いのかわからない」と思われる方は、是非不登校支援センターにご相談ください。

タイミング次第では、より早く今の状態から抜け出せる可能性があるかもしれません。

 

↓↓↓↓今回の文章中に出てきた『傾聴』については、以下の記事も参考にしてみてください。↓↓↓↓

不登校の子どもへの接し方で有効な技法『傾聴』とは?

↓↓↓↓同じような状態の対応方法について記載している記事もありますので、合わせて読んでいただけたらと思います↓↓↓↓

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