大人も子どもも気にする【居場所と役割の確保】について
こんにちは。不登校支援センター大阪支部の佐久真です。
先日、不登校支援センターに来られるお母さんから、ご主人のご実家で過ごされたお正月のエピソードをお聞きしました。
ブログに掲載する許可をいただいたので、今回は脚色を交えてご紹介したいと思います。
私のポジションはどこ?役割は何?
そのお母さん(以後Aさんと記述)はお正月にお父さんのご実家に行くのが苦手と仰っています。
特に仲が悪いわけでも、子どもが行きたがらないわけでも、ご実家が遠方なわけでもありません。
その理由として・・・
- ポジションの確保
- 周囲に合わせて動くこと
- 正月の妻はこうあるべきというジェンダー観
この3つを挙げられました。
1.ポジションの確保
これは、自分は今どこで何をしているのかということ。
Aさんは、お父さんの実家での居場所の確保は容易ではないと仰います。
「Aちゃん久しぶり~元気にしてた?」「〇〇くん(子どもの名前)も大きくなったわね~」
と、近況を報告したり、普段の御礼を伝えたりと、 ”まず先にすべきこと” がたくさんあるとのこと。
そして親戚全員での会食に合わせて、女性方はあれこれ準備に入るそうです。
そこではお決まりのこの言葉を、必ず言われます。
「Aちゃんは座ってゆっくりしていてね~」と・・・
Aさんは心の中で思うそうです。
「そんなことできるわけない・・・」と。
そして次に、ポジションと役割の争奪戦がはじまります。
2.周囲に合わせて動くこと
そこからすぐさま周囲を見渡して、今自分は ”どこで” ”何を” すべきなのかを考えるそうです。
ただ、すでに先に到着しているお父さんのご兄妹や、そのお嫁さん達、お姑さんのご姉妹、などが既に自分のポジションを確保して、役割をこなしている状況らしいのです。
【ポジション①~台所~】
ここは、毎年お姑さん、お姑さんの妹さんの二人が、その日に出す料理の仕込み、盛り付けなどを担当しておられ、全く入る余地はないそうです。
洗い場は? 洗い物が出るのは、会食が始まって中盤辺りにようやく出るので、まだありません。
【ポジション②~出来た料理の配膳・テーブルセッティング~】
これも、お父さんのご兄妹のお嫁さんたちがすでにかかっているとのこと。
後からきて「私も手伝います~」と言っても、「あっここは大丈夫だから~」と一蹴されるそうです。
他のお嫁さん方もポジション取りに必死だそうで、「このポジションは絶対譲らない!」と言わんばかりの雰囲気で、無理に介入することも難しいそうです。
【ポジション③~子ども達の遊び相手~】
このポジション取りは難しいところです。会食をする準備とは関係ない役割です。
ただし、部屋の中で走り回ったり、遊んで~という子ども達のお相手は誰かがしないといけない役割なので、Aさんは一瞬「では私は子どもと・・・」と考えたそうですが・・・
そこはすでに、お父さんの妹さん(現役の保育士さん)の独壇場・・・
それは上手に上手に子ども達をのせて、遊ばせて、子ども達も楽しそう!
妹さんは会場準備に入る雰囲気を察して、「じゃあ次はお外に行って、みんなで羽子板で遊ぶよ!」などと言って、子どもの居場所までうまくリードして、もう完璧。
素人がうっかり手を出すような役割ではないという雰囲気だったそうです。
【ポジション④~男性陣の話し相手~】
すでにご実家のお父さんの周りには、数名の男性陣がいて軽く肴をつまんで、飲み始めています。
しかしそこは男の世界。話も分からないし、はっきり言ってつまらない。
Aさんは私がここに座っていても、何の役にも立たないと思ったそう。
はたして、Aさんはポジションと役割をどう確保したのでしょうか?
今年に限って言うと、Aさんは②テーブルセッティングの一員に何とか入れたとのこと。
ほかのお嫁さん方がやることに注視し、何かやることはないか!?!?と、細かいことでもなんでも、自分は今この居場所で、この役割をしていますとアピールするかのごとく、必死に考え、動き回ったそうです。
- すでに並べている箸・お皿のセットをなんとなく整えてみる
- 座布団をビシっと縦横そろえて整える。
- 配膳された大皿料理を、これはこっちのほうが、いややはりこっちか?と並べ直してみる
Aさんは仰っていました。
「私、皇室の会食準備でもしてるのかなと思いましたよ。あんなに整えられたテーブルセッティングに座るのが、結局小学生の子ども達もいるのかと思うと笑えましたね」と。
3.正月の妻はこうあるべきというジェンダー観
何をしているのかは関係ない。周りにどうみられるか。
良い妻として、良い子ども達の母として。
他の女性陣との距離もそこそこに、世間話もしつつ、基本的謙遜の態度は忘れない。
加えて、お正月の妻たちはこうあるべきというジェンダー観が強いご家庭のようでした。
男性たちが座っている場所に、少しずつ大皿料理をとりわけ、ビールがなければ取りにいき、ただでさえ忙しいのに、「Aさんは仕事どうなの~?」と、お父さんのご兄弟の、興味があって聞いているのか分からない質問に、笑顔で適当に答え、良き妻を演じなければならない。
しかも、そんなときに限ってご主人(お父さん)からは何のフォローもなかったそうです。
お父さんのご実家ですから、お父さんは居心地が良いし、リラックスして甘えられる環境なのではないでしょうか。
ある方の言葉で、こういう言葉があります。
「男性が自分の実家で無口になる(あまり話さない)のは、究極の甘えである」」
※このブログを読んでいらっしゃるお父さん方、気を悪くされないでくださいね。あくまでとあるご家庭での話を事例として紹介しております※
ストレスを感じている家族へのフォローの大切さ
大変そうにしているお母さんの、準備を手伝ったほうがよい、というわけではないのです。
この事例の場合は、お母さんがどのような気持ちでいるのか、都度声かけをしたり、少しでも気持ちを聞いたり、お父さんが率先して親戚方と話をすることで、お母さんの心理的不安が、少しでも軽くなるようフォローしていただけたらいいですね。
ご実家に行く前にも、気の利いた手土産探しに奔走し、お正月にふさわしい、そして華美すぎない服装を入念に選び、子ども達の荷物を準備してと、お母さんは行く前からヘトヘトだったかもしれません。
体以上に、心が疲弊しきっていては、お父さんのご実家で過ごすお正月が毎年憂鬱になってしまう可能性もあります。
加えて、子どもが不登校の状態だとお母さんは、日ごろ周りに色々言われることも多いはず。
不登校は、「学校に行かせていない親が悪い」という見方をされることが、一部にあるのは事実です。
特に家を守る母親が悪いとみられることも多く、しつけがなってない、コミュニケーションが足りないと、言われてしまうこともあるようです。
不登校支援とは、お母さん支援
不登校支援カウンセラーとして、この言葉を胸に仕事をしています。
不登校支援とは、子どもの支援ではなく、お母さんの支援です。
お母さんが頑張れば、子どもがよくなるというような意味ではありません。
不登校をお抱えのお母さん方は、いつも前述のような心的ストレスを担っています。
そのお母さん方のお気持ちに寄り添い、ともに考え悩み、とりあえずこうやってみようと試してみてはまた話し合いを繰り返す。
不登校支援はそういうものだと思います。
不登校に解決法はありません。
不登校支援センターのカウンセラーはお母さん方に寄り添います。
一緒に考えさせてください。
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