子どもの発達段階と不登校との関係④~高校生~
こんにちは。不登校支援センター横浜支部カウンセラーの本沢裕太です。
令和初の年末年始でしたが、皆さんいかがお過ごしでしたでしょうか。
私は、家族が体調不良だったもので、元日から休日診療を利用しておりました。
初めて利用したのですが、私たち以外にも20~30組のご家族が順番待ちされていたのには驚きました。
年の瀬にはコンビニや飲食店の「正月休業」が話題になりましたね。「正月くらい休ませてあげれば良いのに・・・」などと思っておりましたが、休日診療に関してはやってくれていた事に感謝しかありません。
その陰には元日からお仕事に従事されている方々がいるという事を肝に銘じようと思った出来事でした。
冒頭から、自分本位な話になってしまいましたが、本年もどうぞよろしくお願い致します。
さて昨年のブログに続きまして、今回は・・・
高校生の発達段階についてお伝えしたいと思います。
高校生は、親御さんの保護の下の生活から離れ、自分自身で生活していく力を養う時期とされています。
それは、
- 自らの進路や生き方を決定できるだけの知識や能力・経験
- 他者の善意や支えに対して気づき、感謝を示したり、それに応える態度などのモラルやマナー意識
なども挙げられるかと思います。
年齢的にもアルバイトが可能になったり原付の免許が取れたりと、今までよりもできることが増えます。
それだけ触れる情報や体験・知識量も格段に増えてきますし、親御さんの目の届かない所で行動することも増えてくるでしょう。
だからこそ、一時的な感情や誘惑に振り回されてしまうのではなく、自分にとって何が一番大切なのかという事を考えながら、冷静に判断、行動できるようになっていってほしいですね。
なぜならここから大人になるにつれて、子どもは社会に出て一人で善悪の判断をしたり、壁にぶつかっても立ち上がり続けていかねばなりません。
ですので、一人の大人として関わりながら、表面的な善悪だけではなく、
何のために秩序やルールがあるのか、何のためにそれらを守る必要があるのか
などの本質的なことを一緒に考えていけると良いのではないかと思います。
事例の紹介
現在、通信制の高校に通うAさんは、元々は全日制の高校に入学していました。
ですが、自分が想像していた環境とは違うと感じ、なかなか自分らしさを発揮できずに過ごしていました。
1学期のうちはなんとか持ちこたえたのですが、夏休み明けから登校しなくなります。
欠席が続き、単位を落とす科目も出てきたので、ご家族で相談されて今の通信制高校へ転入しました。
環境も変わった事で行ける様になるのではと、親御さんも本人も期待していたのですが、教室に入り皆と一緒に授業を受けることが辛く感じてしまい、休みがちになります。
そのタイミングで支援センターへご相談に来られました。
センターにカウンセリングを受けに来た当初のAさん
Aさんは、自分の至らなさや、親御さんへの申し訳なさから自殺をほのめかす発言もあり、親御さんは大層心配されておりました。
カウンセリングを進めていくと、Aさんのこれまでの学校生活で頑張っていた事、そしてどんな想いを抱いて高校へ進学したかなどが分かってきました。
そして、そういった Aさん自身のこれまでの経験や価値観が、なによりAさんを苦しめていた原因だったのです。
- 「自分で決めたことは最後までやり遂げなさい」
- 「周りの人には迷惑をかけないようにしなさい」
- 「何事にも全力で努力しなさい」
という、どこのご家庭でも子どもに伝えていそうな言葉を、正しいと考え行動してきたAさん。
そのため、その言葉のように行動しないクラスメイトを見ると穏やかな気持ちではいられなくなっていました。
ましてや今の自分は、
- 自分で決めた学校にも通えてない
- 親に迷惑ばかりかけている
- 時間はあるのにやるべき事に努力できていない
という風に感じてしまい、自己否定の気持ちが強い状態でした。
それもあって、親御さんが心配して様子を尋ねても詳しくは話さなかったり、不機嫌な態度を取ってしまったりしていました。
カウンセリングの中では、親御さんには言わなかった事をポロポロと話すようになっていました。
- 今の自分がハマっているもの
- やってみたいと興味があること
- 学校でのクラスメイトとのやり取りや感じたこと
そういったことを話しながら、自分自身と向き合っていました。
それを親御さんも無理に問いただしたりはせずに、今は親に話したくないというAさんの気持ちを受け止めてくださりました。そして、「話したくなったらいつでも聞くよ」という姿勢で見守っていらっしゃいました。
すると、少しずつ行動に変化が現れ始めました。
- 授業は受けないまでも、学校に行き先生と話してくる
- 家事の手伝いを自ら申し出るようになる
- 外出の頻度が増える
- アルバイトを探し始める 等
Aさんは今の自分にできることを自主的に考え行動するようになったのです!
Aさんはそのときの事をこのように振り返っていました。
「今までは、
- 自分で決めたことは最後までやり遂げなくちゃいけない
- 周りの人には迷惑をかけちゃいけない
- 何事にも全力で努力しなくちゃいけない
と考えていた。しかし、必ずしもそうできない時もある。
そんな自分はダメだって思ってしまうけれど、ダメだって考えて落ち込んでしまうだけではなくて、じゃあ今の自分には何ができるんだろうって考えられる様になった。」
Aさんは、
親に迷惑をかけて申し訳ないという思いを、感謝の気持ち
やるべき事をやる気にならない気持ちを、自分への探求心
に変えることで、今の自分ができることを見出しました。
それらを形に表すことの積み重ねが、Aさんの自己肯定感を徐々に取り戻していきました。
今は、「やるべきこと」に対してスモールステップでトライしています。
※こちらのブログも併せてご覧ください。「不登校を長期化させないために大切な考え方」
まとめ
この様に、試行錯誤を経て「自分はどんな人か?」という答えに辿り着くと、同性の友人や異性との親密な関係を築けるようになります。
それは相手のために尽くしたり自分をさらけ出す事で、信頼関係や愛情が育まれていくからです。
逆に言うと、「自分とはどんな人か?」という答えに辿り着けなかった場合、自分が傷つくことを恐れたり、喪失してしまう恐怖から、深い対人関係を築けずに距離を取ってしまったり回避してしまい、孤独に陥ってしまいます。
そういった意味でも、中学生・高校生時代での「自分探し」はその後の人生においてとても重要なものとなりますので、自立に向かうよう支援していきたいですね。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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