子どもの発達段階と不登校との関係③~中学生~
こんにちは。不登校支援センター横浜支部カウンセラーの本沢裕太です。
さて今回は、中学生の発達段階についてお伝えしたいと思います。
この時期の子どもの特徴として、他者からの評価がとても気になる時期ということが挙げられます。
小学生の発達段階でもお伝えしましたが、今まで親や先生の言うことが絶対だったのが、そうではない自分だけの価値観を模索し始めます。
また、グループやコミュニティに属し、その中での評価が自己評価に与える影響が非常に大きくなります。
それゆえ、良く思われたいという気持ちが強くなればなるほど、
- 自分の価値基準を持たない
- 他者の価値基準を優先してしまう
- 自分らしさを見失う
- 自己否定してしまう
といった状態に陥ってしまうことがあります。
そうならないために、自分だけの価値基準を模索して、新たに再構築していく必要があります。
これは言葉で言うのは簡単に聞こえるかもしれませんが、大変な苦しさを伴います。(皆さんもご経験あるかもしれませんが・・・)
日々、身近な人に嫌われないように、非難を受けないように気にしながら精一杯生活しながら、
- 自分が将来どうしたいのか
- どんな時にいきいきとしているのか
- どんな時に自分らしくいられるのか
を振り返り、自分がどんな基準に価値を見出しているのかを知るために、自分に向き合わなくてはなりません。
自分と向き合うと、どうしてもネガティブな面も見えてしまいますよね。
なのでこの時期は、
受容的な態度や姿勢
共感的理解
を示し、日常的に外見よりも内面性,人格的な価値が大切であることを繰り返し伝え、肯定的に接してあげてほしいのです。
もし、お子さんが見出した価値基準が自己中心的であったり反社会的であれば、その事に本人が自分で気付けるように寄り添い関わり、軌道修正させてあげたいのです。
そして、そのように関わるために、親御さんやご家族の方、またはお子さんに関わる立場の方は、是非ご自身の自己理解を深めて欲しいのです。
善意からくる行動で相手を傷つけない為に
中学生のお子さんを持つ親御さんとの話の中で、関わろうとすればするほど関係が悪化するといった話を聞くことが多いです。
- 私はこう伝えたのに・・・
- 私はこうしてあげたのに・・・
- そんなつもりじゃないのに・・・
と感じているのに
- 相手(子ども)との関係が改善しているようには感じられなかったり、
- 期待した反応が返ってこなかったり、
- 頭では分かっていても行動が伴わなかったり、
ということが起きているのではないでしょうか。
他者からの評価が特に気になる子どもは、少ないコミュニケーションの中でも実はたくさんの情報を受け取って判断しています。
大きく二つに分類すると、「言語」と「非言語」と呼ばれるものです。
言語は、文字通り「何て言われたか」ですが
非言語とは、様々な情報がそれにあたります。
- どんな表情で
- どんな口調で
- どんな声の大きさで
- どんなしぐさで
- どんな雰囲気で
などなど、五感で感じとるものは全てと言っても良いかも知れません。
そして、「非言語」の情報の方が、人に与える印象は強いものになります。
なので、その人から発せられた「言語」と「非言語」から得る情報に不一致や違和感があると、途端に警戒心を持つのです。
例えば
内心、そろそろ学校に行ってほしいなあ、定期試験だけでもうけてくれないかなあ、と思いながら
「無理しなくて良いよ」
という言葉を発したとしても、きっと子どもはその矛盾や違和感を感じ取っているはずです。
また、子どもがゲームで何か成し遂げた事に対して、「これできたんだよ!」とか「見てみて!」と言ってきた際に、
よく分からないけど、とりあえず褒めておく
というのもちょっともったいないかもしれません。
親御さんの迷いや葛藤、関心の強弱は、子どもからすると、不一致や違和感として伝わってしまいますし、それに傷つき不信感を抱く子もいます。
事例の紹介
中学3年生のA君は、中学2年生の途中から学校に行かなくなり、家でスマホのゲームをして過ごすことが多くなりました。
A君と話しをしていて感じたことは、自分にとても自信がなく、人に対しての警戒心がとても強いという印象でした。
まるで、誰も自分の事を受け入れてくれない、誰も信用できないというオーラを身にまとっている様でした。
話をしていく中で少しずつ打ち解けていけたのですが、A君の中にはとても強い「~ねばならない」思考がある事が分かってきます。
- テストでは90点以上取らなくてはならない
- 学校では模範的な行動をしなくてはならない
- 輪を乱してはならない
などです。
親御さんと話ししている中で、A君がそう考える様になったあるきっかけに気づきます。
A君には高校生のお姉さんがいるのですが、成績は優秀で、学級委員をやっており、部活にも精を出して、友人にも恵まれている様でした。
親御さんも、本人を目の前にお姉さんと比較したことなどもちろんないですし、A君に「お姉さんの様になりなさい」と言ったこともありません。
ただ、お姉さんは褒めるところがたくさんあるので声をかけやすいが、A君にはそういった面が少なかったかもしれないという事でした。
ただそれだけの事かもしれないですが、心理検査を行った結果、A君の中には
- 親から拒絶されている
- 親から受容されていない
- 親の期待に応えられていない
が強くあることが分かってきました。
A君は親御さんからの「非言語」の情報を、マイナスイメージで受け取ってしまったのです。
親御さんは、そんなことを「言語」にした事がなかったにも関わらずです。
そのことが本人の自己肯定感を下げ、学校生活を送る事に強い拒否感を生んでいました。
その後、ご家庭ではA君に対し、「なんでもない時」にできるだけ声をかけるように取り組んでいきました。
何気ない挨拶、世間話、好きなものの話、今みているテレビの話・・・などです。
そういった「なんでもない時」に関わりを持つ事で、
- 成績が優秀じゃなくても大丈夫
- 模範的な行動をしなくてもじゃなくても大丈夫
- 無理に皆の輪の中に入らなくても大丈夫
という気持ちが芽生えていきました。
そこから少しずつ、先生から出された課題に手を付け始めたのです。
親御さんも人間ですし、人間には感情があります。
いつもいつも受容的にいられるわけではないでしょうし、お子さんに期待してしまう時だってありますし、イライラしてしまったり、八つ当たりしてしまう時だってあるでしょう。
特にお子さんが2人以上いらっしゃるご家庭の場合では、その場その場での対応を求められるシーンが増して大変だと思います。
高校生、中学生、小学生を同じように対応する訳にはいかないですし、学年や発達段階によっては求められる対応が変わってきます。
学校を休んでいるお子さんに対してだけ、いつもと違う対応をしていれば、他の兄弟は面白くないでしょうし、不適切な行動で注意を引くという話も面談の中でよくお聞きします。
そんな時、きっと判断される価値基準があるはずです。
それを振り返る事で、A君のように歪んだ認識をされてしまう事は防げるのではないでしょうか。
お子さんとの関わりを、もっと改善させたい、悪化させたくないとお感じでしたら
- ご自身がどういった基準に価値を見出しているのか
- 相手から見たら自分はどう見えるのか
- 自分の言葉は相手にどう伝わるのか
という事について、一緒に整理していきましょう。
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