全く勉強しなかった子どもが勉強できるようになった理由とは?
こんにちは。不登校支援センター東京支部の椎名愛理です。
カウンセリングの中で、よく親御さんから
- 「うちの子、学校に行っていないのに家で勉強しないんです」
- 「みんなが学校に行っている時間、せめて自宅学習をしてほしいのに、ゲームばかりしていて・・・」
- 「『勉強しなくていい』と思っているのか、と不安になってくるんです」
など、子どもの勉強に対する姿勢についてお話を伺うことがあります。
学校に行っている時間帯なのに、お家でだらだらしている、好きな事しかしていない、友達や先生が学校の課題を持ってきても見向きもしない・・・
こうした様子を見ていると、親御さんとしても『それでいいと思っているのか』『この子は何を考えているんだろう』と焦りや不安、苛立ちなどのお気持ちが大きくなることと思います。
皆勤登校だったAさんが、徐々に学校を休み始めるまで・・・
今日は、学校に通わなくなって一年が経過したAさんが、勉強を始めるまでの様子を皆さんにお話し致します。
私がAさんと会ったのは、Aさんが中学校2年生の時でした。
小学校低学年の時は、皆勤で学校に通っていたAさん。しかし高学年になると、最初は腹痛から早退したことをきっかけに、徐々に体調不良のための遅刻や欠席が増え、気付くと月に2~3回は学校を休むようになっていました。
しかし、連続して学校を休むことはなかったため、親御さんも「不登校ではなく体が弱いのではないか」と考えていたそうです。
しかし中学校1年のゴールデンウィーク明けから、全く学校に行かなくなったのです。
その当時のAさんは、
- 一日中ベットにこもり携帯を見ている
- 朝夜関係なく寝ている
- ごはんやお菓子を食べすぎる(食べることで気持ちを発散させているよう見える)
といった、親御さんも見ていてご自身が辛くなるような様子だったそうです。
徐々に気持ちは上向きになるも、勉強には手がつかず…
親御さんは、Aさんの不安や苦しさ、学校に行きたくないという気持ちを否定せず、寄り添うことを意識されていました。
その後、Aさんのお家での様子は徐々に変わっていったそうです。
一日中布団にもぐっている状態から、少しずつリビングに出てくるようになり、昼頃には完全に起き、夜は0時を過ぎるものの寝始め、ごはんも家族と一緒に適量を食べるようになりました。
親御さんとしては、気持ちが沈んでいる様子が徐々に上向きになってきたため、「学校に通うことはまだ難しいとしても、自宅で勉強などをしてくれれば」と希望を持ったそうです。
そこで、お家でのAさんの行動は否定せず、今の行動にプラスして、教科書を読む事やプリントを見返すこと、ネットでの学習方法などを提案するなど、Aさんを勉強へ導かれようとされました。
しかし、Aさんは中々それらに手を付けようとしませんでした。
そんなAさんが勉強し始めた、たった一つのポイント
親御さんの促しがあっても、中々Aさんは勉強を始めませんでした。
そんなAさんが、勉強を始めたきっかけ、それは『Aさん自身が、勉強が必要だと気づいたこと』でした。
Aさんはカウンセリングの中で当初、
- 「親は勉強しろというけど、今はそんな気分じゃないんです」
- 「中学生の勉強をしなくても、大人になって困ることはないと思う」
- 「学校で習っていることなんて、社会に出て使わないですよね?」
と、親御さんから勉強を促されることに抵抗したい気持ちや、そもそも勉強には意味がない、といった考えを話していました。
しかし、周りの友達が高校受験に向けて受験勉強をし始めたという情報や、どのような大人になりたいのか、今の生活を続けていきたいのかといった部分を考えること(自己探求)を続けていく中で
「勉強は好きではないけれど、大人になって仕事をする中で、基本的な事はわかっていないと恥ずかしいかな」
「出来たら、みんなが今までやっていた勉強範囲に少しずつでも追いつきたいな」
「勉強しないと罪悪感や不安があるけど、少しでも机に向かったら嫌な気持ちが少なくなる気がする」
と、勉強に対する気持ちが変わっていきました。
大切なのは、『誰が』勉強が必要だと感じているか、ということ
ここで、振り返ってみましょう。
当初、学校にいかないAさんに勉強が必要だと思っていたのは親御さんでした。(Aさんではなかったということです)
この時、いくら親御さんや学校の先生が勉強の大切さや、勉強しないことのリスクをAさんに話しても、Aさんは聞く耳を持ちませんでした。
しかし、勉強を始めた時、勉強が必要だと感じていたのはAさんです。
人間は、人から説得されたり、何かを強く勧められると『自分の自由や考え、意見を奪われるのではないか』という不安を感じます。すると、本来必要だと思っている事でも『自由を奪われることに抵抗するため(自分を守るため)』に、真逆の事をしてみたり、勧めを断ったりと真逆の行動をしてしまいます。
大切なのは、子どもが自分で『何が必要か』『どのように生活したいか』『今後どうしていきたいか』といったことを安心して考えられる時間や環境なのだろうと、私は考えています。
Aさんはその後、「いきなり皆に追いつくことは難しけれど、少しずつ勉強していこう」と自分自身で決め、学校のプリントを一日一枚から取り組み始めました。
勉強のペースは親御さんから見ると、受験に間に合うのかという不安もあったそうですが、その後は高校受験に向けて自分でペースアップし、希望の高校に合格しました。
・・・とはいうものの、子どもの『自分で』という部分を待つのが辛い、つい焦ってしまうというお気持ちもあることと思います。
そんな時は、私たちカウンセラーにお気持ちを聴かせてくださいね。
親御さんも子どもも気持ちの良い時間が増えるよう、一緒に考えてまいりますね。
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