不登校専門カウンセラーが解説「映画:ベイマックス」から考える『共感』とは?
こんにちは。不登校支援センター東京支部の椎名愛理です。
突然ですが、私はディズニーがとても好きです。ディズニーランドやディズニーシーで思いっきり遊んだり、ゆっくり過ごしたりすることも好きですし、ディズニー映画などの作品にも心惹かれます。
今回は、ディズニーの映画『ベイマックス』からカウンセリングや気持ちの整理について考えたいと思います。
映画『ベイマックス』は2014年12月に日本で公開された3DCGのアクション・ファンタジー映画です。
最愛のお兄さんを謎の事故で失った天才少年ヒロが、心の傷と向き合いながら再出発する物語。
この物語の中で、人々の心と体を守るために兄が作ったロボットが『ベイマックス』です。
ベイマックスは医療用ロボットで、レーダーでスキャンした人間の心拍数や脳波、血液型などを瞬時に分析することができ、また脳内伝達物質の量から、相手のストレスや感情を把握することもできます。
自分のストレスや感情と向き合うというのは、根気のいる課程ですよね。時に向き合うことに疲れてしまったり、辛い思いと対峙することは辛さを追体験するようで、心が苦しくなることもあるかと思います。
そんな時、ベイマックスを視聴すると「ベイマックスにスキャンされるだけで、ストレスや感情を客観的に理解することができるなんて!」と少し羨ましい様な気持ちになるかもしれませんね。
体のケアだけでなく、心のケアにも万能に見えるベイマックスですが、一つだけいくらスキャンしても把握できない心の動きがあります。
それは「痛み」です。
「今の痛みを1から10段階で言うと、どれくらいですか」
どんなものも数値化して客観的なデータを算出できるベイマックスでも、人の痛みはスキャンすることができないのです。そこでベイマックスは、痛みを10段階に分けて
「今の痛みを1から10段階で言うと、どれくらいですか」
と人々に問いかけます。
このシーンを見た際、私は「なるほど!」と納得してしまいました。
私たちは、自分の気持ちを相手に伝える際
- 「人から○○と言われて、とてもショックだった」
- 「××があって、悲しい気持ちになった」
など、自分の感じた痛みや悲しみを言葉を尽くして伝えます。
しかし、実際に痛みや苦しみを経験した当事者と、その事柄を伝えたい相手というのは別の人間。
- どれくらい痛かったのか
- どれほど傷ついたのか
といった部分を、自分が感じたように伝えるということは難しいのです。また伝えられた相手も、同じ様に痛みや苦しみを感じるというのは難しいものです。
これは、心の動き自体が明確に数値化できないからかもしれません。
そのため、ベイマックスは相手が感じた痛みが10段階中何段階目かを質問し、その度合いによって必要なケアを提供するという仕組みのようです。
カウンセリングでも使われる『ナンバリング』
この「相手の痛みや感情を同じ様に感じる=共感する」ために、気持ちを段階的に考えるという過程は、実はカウンセリングでも使われています。
- 不安の強さによって、不安材料を項目別に上げていく(小さな不安材料から向き合っていく)
- 前に感じた悲しみと、今感じた悲しみはどちらが大きいかを考え、教えてもらう
- どれくらいイライラしているのか、10段階評価で考える
など、感情を整理するためにナンバリングをしていきます。
このナンバリングですが、
①整理をすることで当事者が自分の感情の大きさや度合を知り、時に自分の成長や変化を感じるきっかけになる
(例:以前は友達にからかわれて、イライラが10段階中9だったのに、今は5になった。からかわれたことを上手く受け流せているのかも!)
②数字で気持ちを共有してもらうことによって、相手の気持ちを共感しやすくなる
(例:前の悲しさの倍、今悲しいということは、よっぽど傷ついたんだろうな・・・)
こんなメリットがあります。
子どもとお話ししていて、「この子の感じている悩みや痛みはどれほどのものなのだろう・・・?」と共感したくても難しい際など、
「今の気持ち(例:イライラや悲しさ)って、10段階でいったらどれくらい?」
という問いかけが、子どもと親御さんの気持ちをより一層繋ぐ一言になるかもしれません。
もっと子供の気持ちが知りたい!などありましたら、ぜひ私たちカウンセラーにご相談ください。
ベイマックスのように『スキャン』することは難しいですが、私たちもサポーターとして一緒にご家族のことを考えていきますね。
関連ワード: カウンセラー , カウンセリング , 不安 , 不登校 カウンセリング , 不登校支援センター東京支部 , 周囲がしてあげられること , 子どもとの関わり方 , 子どもの気持ち , 子どもの状態 , 適切なアプローチ , 関わり方