【事例】不登校の高校1年生Aさん(女の子)が考える都合の良い目標とは?
こんにちは。不登校支援センター仙台支部の上原です。
本日は久しぶりに事例の紹介をしてみたいと思います。
ちょうど夏休みの時期ですので、その事例です。
高校1年生Aさんの場合
Aさんは高校1年生。
5月の後半から休みが増えてきて、7月は出席したのが数日のみでした。終業式にも参加できず、夏休み明けが不安と言うことで来所されました。
基本的なカウンセリングの流れで現状把握をした後、本人と目標を作ることになりました。
彼女が挙げた目標は、
1.留年はしたくない
2.なるべく出席はしたくない
3.進学はしたい
4.勉強はしたくない
5.友達が欲しい
以上のようなものでした。
これを聞いて、皆さんはどのように感じられるでしょうか?
親御さんはこの意見を聞いて「勉強せず、出席もせず、進級して進学したいなんて都合が良すぎる」といった印象を持ったご様子でした。確かにそのように感じられてもおかしくないですね。
では本人(高校1年生Aさん)はどう感じているでしょうか?
Aさんにお話を聞いてみたところ「ムシの良い話だと分かっているが、可能ならそうしたい」というようなことでした。
私はこれを聞いて、意外かもしれませんがこの子は早期に復帰できそうだな、という印象を持ちました。
様々な子どもの状態を見てきておりますが、自ら「こうしたい」という意見を持っている子というのは稀です。
多くの場合
- 「どうしたらいいか分からない」
- 「やらなきゃいけないとは思っているんだけど・・・」
といった反応です。
それを踏まえた上で、改めて彼女の挙げたものの対策を考えて見ましょう。
出席はしたくない、でも進級したい ⇒ 進級に必要な取得単位とそれに必要な出席日数を調べる
勉強したくない、でも進学したい ⇒ 今の学力で入れる学校を探す、効率の良い勉強をして最小限の努力で合格を得る
友達が欲しい ⇒ 学校以外の場所で友達を作る
ちなみにこれは彼女自身が考えた意見です。完璧な答えかどうかは別にして、本人がその意思をもってやれば可能そうに感じませんか?
彼女は学校がお休みの夏休みの期間を利用してこれらの考えを整理していき、実際に行動していきました。休み明けは先生と相談して最低限の日数を確認し、計画的に出欠席を繰り返しながら進級を目指しました。なんとか昨年は進級できたようです。
本人は、冬に予定外の体調不良で欠席してしまい「少しやばかった」などと言っており、来年度はもう少し余裕を持った日数を計画するそうです。
もし都合の良い話を否定していたらどうなったか?
これは仮定の話ではありますが・・・
もしAさんが「こういう風にしたい」と主張したのを「そんな考えは甘い」と受け入れなかったどうなっていたでしょうか?
話し合いの結果「ちゃんと通学することにする」となった可能性もあります。同時に「こういう風にやれないのなら諦める」となってしまっていたかもしれません。
私達が支援をする際に「本人がどうしたいのか?」というのはとても重要な要素としてみています。
それは大人からすると考えの浅い、甘ったれた、実現困難な話かもしれません。しかし、そこで否定して話を切ってしまうと、本人が諦めてしまうことがあるんですね。自らやってみて「これではダメだ」と気付いて諦めるのとは、まったく意味が違ってきます。
Aさんの場合も「楽をしたい」という気持ちが大きかったのはいなめません。本人にも自覚があるのですから余計にそうです。
ですが「楽をしたい=駄目なこと」ではありませんよね?
楽をするためにどうしたらいいのかを考え、実行していく力を見つけられれば、その先の人生でも役に立ちます。
実際に私たちもいかに効率よく仕事をするか、職場の環境が働きやすくなるか(楽になるか)は考えていることでしょう。厳しさに耐える力も大事ですが、それは本当に耐えることで身につくものでしょうか。
子ども達は素直に「楽をしたい」と考えることがあります。それに対しまっすぐに努力することを伝えるのも大切です。同時にその自分のやりたい形を実現するにはどうしたらいいのか、それを考えてもらうのも大切です。
極端な話、ニートみたいな生活をしたい、毎日遊んで暮らしたい。
そんな風に言われたら「えー?」となりますが「じゃあ実際にどうやってその状態を作ろうか」と真剣に考えていくことはしないでしょう。しかし、この話も「今すぐに」と言われれば難しいですが「将来的に」となれば話が違ってきます。高収入な仕事についてお金をためて、資産運用してアーリーリタイアを目指す、なんて昨今では良く聞く話です。
都合の良い話を現実に置き換えるとどうなるか、可能なのか、やるとすればどうやるのか。
そんな風に自分の願望を形にしていく力を伸ばしていけるといいですね。
どんな風にお話をすれば、そのように進んでいってくれるのか、気になる方は面談時にご質問ください。伝えられる限りお伝えしたいと思います。
それではまた。
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