【事例】2年間学校に行っていなかったAさんが教室に入れた理由③
こんにちは、不登校支援センター横浜支部の安則芳郎です。
今回も事例紹介という形で記事を書かせていただきます。※登場するAさんとそのご家族については、ご本人たちに同意を得た形でご紹介させていただきます。
これまでのあらすじとして・・・
2年間学校に通っていなかったAさんは、カウンセリングや親御さんからの対応を通じて別室登校をする決意をしました。そして結果として別室登校をすることは出来たのですが、そこから先の教室になかなか入ることが出来ない状態となっていました。(いわゆる別室登校への“慣れ”が生じてしまった状態)
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【事例】2年間学校に行っていなかったAさんが教室に入れた理由①
【事例】2年間学校に行っていなかったAさんが教室に入れた理由②
さて、今回はAさんが別室から教室へ戻っていった経緯についてお伝えしたいと思います。
「教室が怖い」という思いをなかなか拭い去れないAさん
Aさんはカウンセリングが始まった当初から「教室はなんとなく怖い」という思いを抱えていました。そしてこのAさんの思いに対して、ご家族とも一緒に掘り下げていきました。
Aさんが教室が怖いという思いを抱えるにあたって見えてきた経緯としては
- 以前、クラスの人から無視をされたり、意地悪を言われたことがある
- 助けてくれると思っていた友達が助けてくれなかった
- また同じことが起こるのではないかというマイナスの未来を想像してしまう
こういったことが挙げられました。
私たちはカウンセリングの中で「これから」のことを考えていきたいわけですが、それを考えるにあたって「これまで」のことも聴いていきます。
十分にこれまでの経緯を聴いていくと、Aさんが「怖い」と思うのもある意味当然であると、とらえることが出来ました。そしてその上で何ができるかを考えていくことが大切です。
そしてAさんにこうたずねてみました。
「本当はどうなりたいの?」
Aさんはじっくり考えたうえで答えました。
- 「友達の輪の中に入って、楽しくおしゃべりをしたい」
- 「高校にも行きたい」
- 「幸せを感じたい」
これがAさんの気持ちの中にある最大の思いだったのかもしれません。
ポイントとなった学校におけるAさんへの対応
その後の教室への登校を考えていくにあたって特に大きかったポイントとしては
- 別室に登校出来る期限を決める
- 教室へ登校する切り替えのタイミングを上手く使う
ということでした。
学校の先生からAさんに「別室にいられるのは中学2年の間まで。中学3年になったら、最初は苦しいかもしれないけど教室に戻ろう」という前提を伝えてもらう形をとりました。(もちろんこういったケースが全て上手くいくとは限りませんし学校によって方針にも違いがあるため出来ることも限られてくることもあるかと思います)そしてその期限までの間にしっかりと準備をし、中学3年生になるタイミングで教室に戻ることを検討していったのです。
Aさんは、自身の特性を見直すワークなどにも取り組みながら教室に戻る準備をしていきました。
Aさんが実施したワークの一例を挙げると、
- 「クラスメイトにどう思われるかを気にする自分」というのは決して悪いことではない
- しっかりと人に対してアンテナを張れている自分であり、Aさん自身がもつすばらしい特性である
ということを感じてもらうリフレーミングと呼ばれるワークなどです。
そして、ついに迎えた中学3年生・・・
4月、クラス替えのタイミング。Aさんは教室に戻ることが出来ました。
最初から最後まで授業を受ける日もありましたし、どうしても苦しくなったときはお休みする日もありました。週3回程度の登校からはじめ、夏休みに入る前までに毎日の登校をすることが実現しました。
親御さんにもここ至るまでに大変な苦労があったと思います。登校し始めたからそれで大丈夫かというと、やはりそういうことはなく心配は尽きない毎日でした。
一度不登校を経験すると、何かが起こったときに「またか、、、」と思ってしまうことがある。
これは不登校の子どもをもつご家族の皆さんとお話をする中で、本当によく耳にする言葉です。
Aさんのご家族においても、これまでの経緯を考えると、いくらAさんが登校できたとしても親御さんとして不安や心配が残るのは当然のことでした。結果としてAさんは夏休み以降も毎日登校することができ、晴れて希望の高校に行くこともできたのですが、実はAさんとのカウンセリングはその後も何週間かに一度のペースで続いていきました。
「経過観察」という言葉がありますが特別なことが起こらなくとも、しっかりと経過を共有し再発防止につとめていくこともとても大切になってきます。
最後に・・
実際の事例をもとに、「2年間学校に行っていなかったAさんが教室に入れた理由」というブログを書かせていただきました。
何よりも大きかったのは、Aさんと、そしてそのご家族と「共に歩んでいく」という感覚でカウンセリングを進められたことだと感じています。
カウンセリングが開始すると、子どもも親御さんも時に苦しさや辛さをお感じになる時があるかと思います。しかしそんな時、共にその気持ちを分かちあうために私たちカウンセラーは存在しているのだと思います。
これからも、一カウンセラーとして、皆様と共に歩んでいければ幸いです。
【事例】2年間学校に行っていなかったAさんが教室に入れた理由①
【事例】2年間学校に行っていなかったAさんが教室に入れた理由②
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