「不登校」を自分軸・他人軸という目線で考える~高校1年生A君の事例①~
こんにちは。不登校支援センター横浜支部カウンセラーの本沢裕太です。
新学期から1か月が経ち、子どもがようやく新生活に慣れてきた頃でしょうか。何とか駆け抜けてきた日々もつかの間、ゴールデンウィークが訪れましたね。このタイミングで訪れる連続した休暇に、喜んで良いのかどうなのか・・・そう思われていた親御さんも中にはいらっしゃるのではないでしょうか?
実際、このゴールデンウィークを境に学校に行かなくなる子どもも少なくありません。
まさにそういう状況だ、という親御さんにとっては、学校に行かなくなった子どもに対して、
- どのような声掛けしたら良いのだろう?
- どのように関わっていったら良いのだろう?
と暗中模索されている事と思います。
そのため今回は、不登校という症状を「自分軸」「他人軸」という目線で考えてみたいと思います。
「自分軸」と「他人軸」ってなに?
- 自分軸とは「自分はどうしたいのか?」を基準に行動をする事
- 他人軸とは「他人からどう思われるか」を基準にする事
と説明ができます。不登校支援センターに来られる方は不登校に対して「他人軸」を基準に行動され、悩まれている方が多いのではないかと感じることがあります。
これは子どもだけではなく、親御さんにも言えます。
子どもが「不登校」になった原因を親御さんとして
- 子ども自身の問題なのではないか?
- 学校側の問題なのではないか?
- 親子関係が問題なのではないか?
と考えてきたけれど、なかなか良い方向に変化しない・・・そう思われていたら、違った視点から「不登校」について考えてみるのも良いかも知れませんね。
実際に、不登校支援センターにカウンセリングに通われているご家庭の事例を取り上げながら「自分軸」と「他人軸」についてお伝えしたいと思います。
現在高校1年生のA君が初めて不登校支援センターに訪れたのは、彼が中学1年生の時でした。
A君は、中学校という環境に強い拒絶反応を示していましたが、不登校支援センターのカウンセリングには来てくれました。学校に行きたくないと言うA君に、親御さんもどう対応して良いのか分からずに困っていらっしゃいました。そして、最初はA君を中学校に連れて行こうともしたようですが、A君が逃げ出してしまったりするので、無理に連れて行くことは良くないと親御さんは感じ、A君を学校へ連れて行くことをやめたとの事でした。
そしてカウンセリングを進めていく中で少しずつ、A君のスゴく真面目で素直な価値観が見えてきました。
- 警察官は正しい
- 高学歴は偉い
- 勉強出来る人はすごい
といった価値観です。
しかしその価値観を持つがゆえに、批判的になってしまう事もありました。
- クラスのアイツは〇〇だから変だ
- あの先生は言ってる事がおかしい
- 自分はやりたくないのに、無理矢理に皆と同じ事をしなくちゃいけないなんて気持ち悪い
などです。A君の場合、小学校から中学校へ進学したことによる環境の変化がきっかけとなり、自分の価値観以外に対する強い拒否感が出ていました。ですがA君がこの価値観に振り回されてしまうのではなく、自分自身で使いこなしていくことができると、その価値観は立派な「自分軸」となります。
では、その時の親御さんはどういう状態だったかというと、まさに「他人軸」での思考や、行動をしていました。
- なんで子どもは学校に行かないんだろう
- なんで言う事を聞かないんだろう
- なにがいけないんだろう
「なんで、なんで・・・」と犯人探しをする内に原因を「親」にあると考えてしまいます。
不登校になった原因に関しても、
- 父親が○○だから
- 母親が○○だから
- ○○な環境だったから
といった考え方をされており、結果として自分自身を否定してしまう事に繋がっていました。無意識に自分自身を否定していると、子どもの機嫌や顔色を伺いつつ接する様になってしまいます。
A君に関しても、「親が子どもの機嫌や顔色を伺う」状態で伝えられた言葉を、なかなか肯定的に捉えることができなかった様です。このことから、カウンセリングの中では、まず親御さんが「自分軸」を作り、その上で子どもと関わっていく事を目標としました。
親御さんが「自分軸」を持ちA君と接することで、少しずつA君にも変化が起き始めます。
A君は自分で、保健室登校から学校に行くことを始めようと考えます。その際は親御さんに、「一緒に来て欲しい」と自分の要望を言葉にして伝えることが事が出来ました。
保健室登校が出来るようになると、次は教室にも行ってみると言い出しました。初めは親御さんに教室の前まで着いてきてもらい、自分の中で大丈夫だと感じられると
- 今日は門まで一緒に来てくれたら良い
- 今日は途中のコンビニまで一緒に来てくれたら良い
- 今日は家の前まで一緒に来てくれたら良い
といった風に、「どこから自分で学校へ行くか」をA君自身で考える様になりました。A君は、学校に行かない状態から、学校に行くことを考え、そのためにどうしたいか・どうしてほしいかを周りに伝え、行動することが出来るようになりました。親御さんが「自分軸」を作りA君と接するようになったことでA君に変化が起きたということです。
その後A君は、中学2年生・3年生の間、志望する高校に向けて受験勉強を頑張って取り組み、現在は無事高校1年生となっています。
親御さんがどんな「自分軸」を作り、A君と関わっていったのか、次回以降でもう少し詳しくお伝えしていきたいと思います。
「不登校」を自分軸・他人軸という目線で考える~高校1年生A君の事例②~
「不登校」を自分軸・他人軸という目線で考える~高校1年生A君の事例③~
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