嘘をついた子どもを叱るのは正解?不正解?〜そもそも、嘘をつく目的を理解していますか?〜
こんにちは。不登校支援センター東京支部の椎名愛理です。
今回は、数日前に私が見た出来事をお話しようと思います。
隣人の家庭の小さな男の子がついた嘘。男の子のお母さんは、男の子を叱っていました。
私の住んでいる部屋の隣には、3歳くらいの男の子と、お父さん、お母さんの3人家族が住んでいます。アパートですので、玄関先にいると、お隣の声がよく聞こえてきます。先日、こんなことがありました。
男の子が、何か嘘をついたらしいのです。お母さんが「嘘つきはお家に入れてあげないよ!」と、男の子と玄関先で押し問答をしていました。
男の子は泣きながら「もうしないからー!ママー!」と大絶叫。
そのやり取りを聞きながら、「うんうん、お家にいれてもらえないの、怖いよね。お母さんも男の子が今後嘘つきになってほしくないから、心を鬼にしているんだね」と私は思っていました。
そして、私が小学生の頃、担任の先生に言われた言葉を思い出しました。
『嘘には、ついていい嘘と、悪い嘘がある』という言葉です。
「重い病気で余命わずかな人がいます。その人に対して「あなたの病気は治ります」と嘘をついた。それは悪いことなのか?」という例から嘘について考えてみましょう。
おそらく、道徳の授業の時間だったのだと思います。先生は、私たち生徒に、こんな例を出してお話をしていました。
「重い病気で余命わずかな人がいます。その人に対して「あなたの病気は治ります」と嘘をついたとしたら、それは悪いことなのか?」
『嘘』というと、私たちは反射的に
- 悪いことだ
- してはいけない事だ
- 相手に対して失礼だ
- 人を傷つける行為だ 等
ネガティブな感情を抱きやすいのではないでしょうか?
確かに、嘘をつくことで、人を傷つけ、裏切り、貶める行動は道徳的にも社会的にも良い事とは言い難いでしょう。ここで先生の言葉を振り返ってみます。
嘘には『ついていい嘘』と『悪い嘘』がある。
小学生のころの私は、嘘には【種類】があり、その種類によって、良い悪いと区別できるということを先生は言っているのだと思いました。そのため、
- 人を傷付けないためという【種類】の嘘ならついてもいい
- 人を傷つけ、嫌な思いをさせる【種類】の嘘はついてはいけない
という、解釈をしていました。
しかし大人になり様々な経験を積む中で、最近になって「嘘には『ついていい嘘』と『悪い嘘』がある」という言葉が示している別の解釈に気づきました。
【嘘の種類】というよりも、【嘘の目的】によって、嘘をつくことが良いか悪いか変わってくるという解釈です。
『嘘をつく』という行動の【目的】は何なのか?
では、【嘘をつく目的】とは何でしょうか?
- 人を傷つけ、自分が良い思いをすることが【目的】の嘘なのか。
- 相手を思い、相手の気持ち、心を守るという【目的】のための嘘なのか。
先生が例として挙げた病気の人の話では、「相手を傷つけないため、気を落とさせないため」という【目的】があり、そのための嘘だったということが分かりますよね。もちろん、自分が重大な病気なら真実をそのまま言ってほしいという方もいるでしょう。つまり、全てがこの例のように、思いやりという目的の嘘が人を守ることにはならないのです。
しかし、もし仮に人から嘘をつかれたとしても、「嘘の目的は何なのか?」と、一瞬考えることができる余裕があると、自分の心がさざ波立ち、怒りや悲しみに揺さぶられる振り幅が、少し小さくなるのではないでしょうか?
最後に・・・
人の『行動』には、その裏側に『その行動をとった目的』があります。
その目的には、
- 人を傷つけるための目的
- 人を守るため、大切にするための目的
というような様々な想いが含まれている目的があります。ご家庭でも、子どもの行動に対して「子どものこの行動の目的はなんだろう?」と、少し思いを巡らせてみていただくと、新しい発見があるかもしれません。
ちなみにお隣の男の子ですが、大絶叫の後、ちゃんとお家に入れてもらえていました。いずれ男の子がもう少し大きくなり、物事の理解が出来るようになった時、「嘘の目的によって、良い悪いがあるんだよ」とお母さんが子どもにお話しできたら素敵ですね。
不登校支援センターで、一緒に「子どもの行動の目的」について考えてみませんか?
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