問題を解決するために必要な3つのポイント
こんにちは。不登校支援センターです。
こちらは過去記事となります。皆様の日々のかかわりのご参考になれば幸いです。
本日は、問題を解決するために必要な3つのことについてお話していきたいと思います。
原因を取り除けば問題は解決する?
問題に出会ったとき、多くの人が意識するのは「何がいけなかったんだろうか」という原因です。そして、我々は知らず知らずのうちに「原因を取り除けば問題を解決できるのではないか」という発想を持っています。
しかし、心の領域において、原因を取り除くことは可能なのか?という難問があります。
原因を追求していくと、行き詰まることもあるでしょう。例えば、子どもが勉強についていけないから学校に行きづらいと言っているとして、当然親御さんは勉強の援助をしようとしますね。しかし、当の本人は勉強しようとしない、といった状況は多々あります。
子どもが学校に行かないのは何か原因があるからであって、その原因を取り除かないといけないのではないか。そう考えているままでは事態が進展しないこともあります。原因を取り除くという視点とはまた違う切り口で考えて行く必要があるのではないでしょうか。
ひとつの切り口として、問題を解決する上で重要な3つのポイント
- リソース
- 解決像
- アクション
についてお話していきます。
問題を解決する上での重要なポイント①リソース
子どもの状態が良くなって、振り返ったときに「これがあったから良かった」と断言できる場合はそう多くありません。
- 子どもが安心して親に自分の気持ちを言え、分かってもらえてる感覚がある
- 信頼できる大人が身近に居た
- 仲間との繋がりがあった
- 自信を育む機会や環境があった
- 自分のいいところも駄目なところも素直に受け容れられるようになったり、柔軟に物事を見ることができるようになったなどの心理的な変化があった
- 本人なりの目標や進みたい道を見つけて、それに向かって行く決断ができた
上記のような様々な要素が組み合わさり、今の状態が構築された、と考えられる場合が多いです。
原因だと思われるものを取り除く→解決 だけではなく、
解決に役立つ要素が組み合わさる→解決 という図式もありうるということですね。
ところで、問題解決のための要素、資源のことをリソースと言います。
- 本人の持っている資質や興味関心、能力
- 本人を取り巻く人々
も本人のリソースです。これまでの私のブログの中でもこの「リソース」という言葉を取り上げています。なぜこのリソースが大事かと言うと、リソースは解決を構築するために必要な資源だからです。
問題解決を料理に例えてみましょうか。
手持ちの材料で手早く料理を作ろうというとき、どんな材料を既に持っているかが大事になってきますね。冷蔵庫を開いたとき、「あれもない」「これもない」とないものばかりを探しても先に進まないでしょう。「こんな材料がある」「あんな材料もある」とあるものに注目するからこそ「あの料理を作れそうだな」と先をイメージしやすくなりますね。
ちょっと例を見てみましょう。
「自分は口下手だ」と思っている子が居ます。
その子が久々に教室に行こうと思っても、なかなか踏ん切りがつきません。
教室でもしも他の生徒に声をかけられたら、「自分は口下手だから上手く喋れないかも」という不安がよぎるからです。
この状況で『ないもの』に注目すると、「上手く喋れない」ということが目に付きますね。それをなんとかしようと思うと、上手く喋れるようになるために、コミュニケーションの訓練が必要になるでしょう。
反対に『あるもの』に注目するとどうでしょう?
私はよく「話し下手は聞き上手」だと言います。余計な口を挟まず相手の話を聞くことは、聞き役として大事なことですからね。その子が「聞き上手かもしれない」という自分のリソースに気付き、「自分は聞き役だから上手く喋れなくてもいいや」と思うほどになれば、だいぶ不安は和らぎそうですね。コミュニケーションの訓練をせずとも、既に持っている力で不安に対処できる可能性も生まれるでしょう。
そういった理由で、『ないもの』に注目するよりも『既にあるもの』に注目することをお勧めします。
リソースの見つけ方については過去の記事『「どうせ自分なんて…」と悲観する子どもへの接し方のコツ③』をご参照ください。
- 打たれ弱いとか
- 表現するのが下手だとか
子どもの『足りないところ』をたくさん探し当てたからといって、前に進めるわけではありません。足りないところを補うには時間がかかることもありますから。子どもに「なんか自分やれるんじゃないか」と思ってもらおうとすれば、子どもが『既に持っているもの』に気付いてもらうことが大事ではないでしょうか。
問題を解決する上での重要なポイント②解決像
- 「自分がどうなりたいのか分からない」
- 「何をやりたいのか分からない」
と言う子どもは多いです。
それはなぜなのか。その理由には、自分のリソースを実感できていないということがあるかもしれません。料理を作ってみようと思っても、自分は何も材料を持っていないと思っていれば、当然料理を作れる気はしませんよね。
陥りがちなのが、リソースと解決像をすっ飛ばして、子どもにアクションを求めるという事態です。それは至極当然のことではありますが、自分の力を感じられていない、どんな風になりたいのかよく分からないという状態で、行動を起こさせるのはとても難しいことです。
自分の能力や資質を感じられていれば、それを「使いたい」という気持ちが湧きやすいものです。「自分はこうなりたい」という解決像を描けていない子どもほど、リソース探しが重要になります。リソースを実感し始めると、解決像をイメージしやすくなるからです。
・なりたい自分
・問題に悩まされていない自分
・上手くいっている自分
それはどんな具合で、どうやっているのか、その『解決像』をイメージできていると、迷ったときに助かります。それは北極星のように自分がどこに進んでいけばいいのか、目印となって教えてくれるからです。そして、解決像が見えるだけでも、スッキリとした気分と言いますか、出口の見えないトンネルから抜け出せたような気分になれることもあります。「私はこれに向かっていけばいいんだ」というのが見えますからね。
解決像を見付けるにあたっては、
- 「もしも全ての問題が解決してしまっていたとしたら、自分は何をしているだろうか」
- 「自分の悩みが解消している状態とは、どんな状態だろうか、今と何が違うんだろうか」
を想像してみることが役立ちます。
問題を解決する上での重要なポイント③アクション
さらにその先、解決を構築するために欠かせないのが『アクション』、具体的な行動です。「私はこうなりたい」という解決像を描けていても、何も行動に起こさなければ絵に描いた餅ですね。具体的にどう行動すれば解決像に近づけるのか、それが定まるとより行動を起こしやすくなります。
料理でいうところの、調理に当たります。この調理は、出来上がった料理のイメージができるからこそ、進められます。材料が色々あったとしても、出来上がった料理のイメージができていなければ調理は進みませんね。「こんな料理を作ろう」という見通しを持ててこそ、調理が捗ります。
アクションを起こす際には『目標』を設定することになります。ここで失敗しやすいのが、自分の理想に近づきたいがために、達成するのが難しい目標を設定してしまうことです。
これまで築き上げてきた習慣を崩すのはなかなか難しいことですので、新しいことを始めるときには大きな目標ではなく、確実に達成できる『小さな目標』を作ることをお勧めします。
たとえば子どもがカウンセリングの場面で、今全く勉強していないけど自分は勉強しなくちゃいけない、これから頑張ってみようと思う、といったことを言ったとしたら、どのくらいの頻度で、どのくらいの時間をやるのか、目標を具体的にしてきます。
そのときに、子どもは「1時間やる」と言ったりしますが、私は「え、そんなにやるの?3分とかは?」と言ったりします。だいたい子どもは「いやもっとやります」と言いますが「じゃあ5分」「いや30分」と修正していって、「このくらいなら絶対やれそうだな」という目標を形成していきます。
ここで大事なのは確実に達成できることであって、どのくらいたくさんやれたかではありません。『最初の変化』を起こすことはとても難しいです。しかし、小さな変化は生み出し易いですし、小さな変化は次なる変化に繋がっていきやすいです。なので、最初から大きな変化を狙うよりは、小さな変化を狙っていくことをお勧めします。
最後に…
ここまで述べてきましたように、おおよそ問題の解決にはこの3つの要素が大事になります。
① リソース
② 解決像
③ アクション
これらはどれも欠かすことのできないものです。中でもリソース探しはお家でも取り組み易いかと思います。解決像とアクションについては、カウンセリングやコーチングで引き出すことになるでしょう。
- まだまだ解決像を描けない、上手くやれる気がしないのであればリソースを。
- なんとなくやれそうな気はするけど、どこに向かって行けばいいのか分からないのであれば解決像を。
- 進みたい方向はわかっているけど、どこから手を付けたらいいのか分からないのであればアクションを。
それぞれ段階に応じて、今の子どもに何が必要なのか、考えていきましょう。
そして、できることならば親御さんにも解決像を持っていただけたら、と思います。親御さんからすると、親御さんにとっての解決像とは「子どもが学校に普通に行ってくれること」かもしれませんね。子どもが学校に行ってくれれば、どれほど心の荷が軽くなることか。
しかし、普通に学校に行ってくれたら、の『普通』というのも人によっては違います。子どもが学校に行っていたら、自分は何を望むだろうか、子どもとどんな関係でありたいのだろうか。子どもが学校に行くことで私は何を期待しているのだろうか。それらは子どもが学校に行っていない間でも叶えられることかもしれません。ぜひ、ご自分や子どもが何を望んでいるのだろうか、とじっくりと見つめてみましょう。
それでは、またの機会にお会いしましょう。
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