極端な子どもの考え方を変える方法
こんにちは。不登校支援センターです。
こちらは過去記事となります。皆様の日々のかかわりのご参考になれば幸いです。
本日は『子どもの考え方を変える方法』について、考えていきたいと思います。
極端な考え方をする子どもは多い
- 「英語なんて将来使わないから必要ない」
- 「ゲーム以外のことはやりたくない」
- 「親は何も分かってない」
- 「先生なんて嫌な人しかいない」
- 「クラスには馬鹿しかいない」
このような、全か無か、0か100か、白か黒かの考え方をする子どもが多いです。こういった『思考の誤り』『認知の歪み』は大人でも知らず知らずのうちに持つものです。周りの人としては、「そんなことないでしょ」「そうじゃないかもしれないじゃない」と反論したくなるでしょう。
そういった思考をすることによって、子ども本人が余計にストレスを溜め込んでいるような場合がありますし、子どもの考え方を変えてあげないと前に進めないんじゃないかと思われる場合もありますね。
そのとき、発言の意図や目的を考えることもすごく重要なのですが、今回はそういった子どもの考えに対して周りの大人はどのように向き合っていくのがいいだろうか、そこを考えていきましょう。
相手の考え方を変えようとすること
相手の考え方をなんとかしようと思ったとき、よくやるのは『示唆』『説得』『否定』といった方法かと思います。
- 「こうかもしれないじゃない」と別の考えを示唆する
- 「いやいやこうでしょ」と自分の考えを押し付け説得する
- 「それは違うでしょ」と相手の考えを否定する
これは手っ取り早い、相手の考えを自分の考えに近づける手段ですね。まだまだ自分というものを確立していない従順な子どもであれば、これで話は済むでしょう。しかし、『自分の考え』をしっかりと持っている、持ち始めている子どもにはなかなか通用しませんね。
そういった子どもにとっては、自分の考えを修正されようとすると、自分が否定されていると感じられるのですね。そうするとどうなるでしょう?
否定されたと感じると、人はなんとか自分を守ろうとし始めます。守りを固めようとして、頑なになりやすくなります。そしてますます自分の考えを曲げないようになってしまうのですね。
子:「英語なんて必要ないからやらない」
親:「分からないでしょ。使うかもしれないし、使わないとしても勉強するのが決まりなんだから」
子:「絶対使わないし、勝手に決められたくないし」
つまりは、相手の考えを変えようとすればするほど、相手は自分の考えを曲げなくなるという事態に陥ることがあるのです。
立場が対等でお互いの意見を確認し合うようなやりとりなら何の問題もないでしょうが、直接的に相手の考えを改めさせるようなやり方では、成長してきた子どもには通用しなくなってきます。
相手の考え方を変えようと思ったならば、「相手の考えを変えようとしない」「相手を正そうとしない」ことがまず第一歩です。
価値観を豊かにしていくために
子どもは自らの価値観を、これからの人生経験で固めていく途中段階です。その過程においては、極端な考え方をすることもあります。親御さんの価値観は、これまでの人生経験である程度固められたものです。自らが経験してきたものが凝縮されています。経験を伴う知、なのですね。
親御さんがその価値観を作り上げてきたのは、様々な経験があったからこそではないでしょうか。失敗が学びになった、ということもあったでしょう。
おおかた親の側に立つと、子どもには嫌な思いをして欲しくないし、失敗して欲しくないので、転ばぬ先の杖を持たせたくなりますね。子どもが転んでしまわないための杖を持たせるために、子どもの考えを修正しようと試みるでしょう。
大人からの警句ももちろん大事なのですが、ちょっと振り返ってみていただきたいのです。
親御さんが自らの価値観を作り上げたのは、自らが身をもって経験して学んだからではありませんか?であれば、まだまだ経験が乏しい子どもに必要なのは、失敗などの経験をすることでしょう。
価値観を磨き上げるためには「自分の考えをもとに行動・体験して、その結果を振り返って検証する」という過程が必要になりますが、『考えの段階』でそれを否定すると、その『考えを検証する過程』をすっ飛ばしてしまうのです。検証もなしに納得するのは難しいですよね。考えを表出しても否定されることが続けば、やがて自分の考えを表に出さないようになってしまう心配もあります。
失敗を阻止することが必要なときもあるかもしれませんが、子どもが自分で考えて自分でやってみて失敗するのであれば、それは必ずしも悪いことではなく、学びになるかもしれませんね。そう考えると、失敗を阻止するために考えを修正するのではなく、失敗などの経験をするチャンスを子どもに与える、というのも必要ではありませんか?
人が表に出すのは考えの一部分だけ
自分の考えを否定されると、人は自分を守ることで必死になると先ほど述べました。しかし、反対に「そんな風に考えてるんだねぇ」と受容されるとどうでしょう?
否定されるよりかは明らかに『心の余裕』が生まれます。『北風と太陽』のようなものです。その考えをますます強めていく可能性も勿論ありますが、余裕があると「やっぱ違うかもな」と考えを自分で修正する可能性も生まれますね。
カウンセリングの場で、とある男の子はお父さんの嫌な所を散々挙げて批判していました。
普通だったら「お父さんのおかげであなたは生活できてるんでしょ」と言いたくなるところですが、私は彼に好きに話してもらいました。数十分後、彼は「でも本当は、父親は僕によくしてくれてる」と感謝の気持ちを語りました。自分で別の考えをし始めることができたのです。
このように、人の頭の中には色んな考えが詰まっていて、表に出てくるのはその一部です。お父さんという同じ対象であっても、正の考え(感謝など)もあれば、負の考え(嫌なところなど)もあるでしょう。自分の中の負の部分を外に出し切ったら、あとに残っているのは正の部分ですね。普段は負の部分が目に付きすぎてしまうけど、実は正の部分もあるなぁと自分で見つめなおすことだってあります。
ここでもし私が
- 「お父さんのおかげで食べていけてるんでしょう」
- 「そんなに嫌いだったら家を出て働けばいいじゃない」
などと言っていたら、彼が自分で別の考えを見つけるのを邪魔していたことでしょう。自分の考えを人に話すうちに、自分でその考えを整理したり見つめなおしたりするものです。「英語なんて必要ない」と言う子もよくよく話を聴けば、「でも嫌いだからってやらないのはどうなんだろう」と自分でその考えに疑問を持っていたりします。
ちなみに『認知行動療法』という、物事の受け取り方・捉え方に修正を加えていくような心理療法がありますが、それを行う場合でもまず重要になるのが、治療を受ける人が、治療者から「自分が受け容れられているという安心感」をいかに感じてもらうかなのです。そういった関係性がなければ治療は上手くいきません。
大切なことは「受け入れられている」「安心感」を子どもに感じてもらうこと
まずは、子どもの言った考えが正しいかどうかを判断するよりもまず、子どもが「そう考えている」という事実を認めましょう。
その上で、できるならば、
- 「どんな風にしてそう思ったの?」
- 「お母さん(お父さん)はこう思うなぁ」
といった風に話し合いを発展させていくようなコミュニケーションのあり方が望ましいです。なぜなら、親のような立場の上の者から「正しさ」を押し付けられて育つと、その子は自分より立場が低い他者(自分の子どもなど)に対しても自分の「正しさ」を押し付けるようなコミュニケーションの型を無意識的に身に付けてしまうからです。
『受け入れられている感じ』『安心感』等、そういったものが、子どもが柔軟に物事を考え始めるのに必要な土壌ではないでしょうか。
それでは、またの機会にお会いしましょう。
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