子どもの視点で見ることが子どもの心情が分かるきっかけに繋がる~クライアントAさんと就職先を探す中でカウンセラーが学んだこと~
こんにちは。不登校支援センター大阪支部の桒原航大(くわばらこうだい)です。
普段カウンセリングをしている中では、子どもの復学が相談の主なテーマとなることが多いのですが、時には復学したあとの進学や就職のことについて一緒に考えることもあります。そこで本日は、あるクライアントAさんと就職について考えたとき、印象に残ったエピソードがありましたので紹介させていただきますね。
就職することを目指したAさん
Aさんは、すでに成人していました。来談当初は家から出ることもつらい状況でしたが、そこから一歩ずつチャレンジしていき、ついにはアルバイトにも一生懸命誠実に取り組めるほどになっていました。そして、アルバイトも落ち着いてきた頃、今後の自分のキャリアについて考えるようになりました。
「いつかは正社員になって働きたい」という思いがAさんの中で徐々に高まってきたこともあり、面談では「ハローワークで求人情報を探してこよう」という目標を立てました。
Aさんも求人情報を探してくることにとても意欲的で、私も次回の面談では、「こんな仕事がいいな」という話がAさん聞けるかもしれないな、と感じていました。実際、Aさんはその次の面談の時にはしっかりと求人情報を集めてこられたのですが、情報を調べるにあたって思いもよらぬ壁にぶつかったとのことでした。
「もし、今の自分の状況で、求人がひとつもなかったらどうしよう」という不安
というのも、ハローワークでパソコンの前に座り、いざ検索しようと思ったときに「もし、今の自分の状況で、求人がひとつもなかったらどうしよう」という不安がふとよぎったようです。
求人はきっとあるとは思いつつも、もし求人がひとつもなかったら、「検索結果 0件」と表示されたら、自分の人生どうなるのだろうと考えると急に怖くなり、検索のボタンをなかなか押せなかったとのことです。
結局、Aさんはなんとかその不安に打ち勝ち、検索ができました。「大丈夫だった、まだ自分には可能性があるのだ」とほっとしたそうです。
当時の私としては、Aさんがその不安を乗り越えたことをとても嬉しく、頼もしく思いつつも、一方でそのような不安を抱くことに対して驚きも感じた出来事ではありました。私は検索したら求人情報があることを知ってはいましたが、Aさんは「求人情報があるかどうかわからない」という状況に置かれていたわけで、その不安はとても大きかったのだろうと思います。
子どもの視点で見ることが、また違った子どもの心情が分かるきっかけに
当時の私にとって、改めて相手の立場で考えること、相手の視点で見ることの大切さを再認識する出来事となりました。
また、このことはいろんな場面にも通じると思います。
例えば、進路を決めないといけないときにもかかわらず、なかなか意欲的には動けない子どももいるかと思います。
もちろん、すべての子どもに当てはまるわけではないですが、もしかしたらその子も動いたほうがいいと思いつつも、動くことで「もし可能性がないことがわかったらどうしよう」という、自分の中で勝手に膨らんでしまった不安と闘っているのかもしれません。
子どもの様子を見ていて、「なんでもっと早く動かないのだろう」とやきもきされているときは、「自分だったらこう考える」ではなく「子どもだったらこう考えるかも」という視点で見ると、また違った子どもの心情が分かるかもしれません。
当時の私にとっても大切な出来事でもありましたのでお話いたしました。皆さんにとっても改めて考える機会となりましたら幸いです。
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