【事例】親ではなくカウンセラーが介入したことによって自分らしさを取り戻した中学2年生A君②
こんにちは。不登校支援センター横浜支部カウンセラーの本沢裕太です。
今回は、前回【事例】親ではなくカウンセラーが介入したことによって自分らしさを取り戻した中学2年生A君①でお伝えした続きで、A君の行動の目的を踏まえて親御さんとカウンセラーとの間で立てた「A君自立作戦」についてお伝えしたいと思います。
A君の行動の目的を考えるにあたって、こんな風に考えてみてください。
- 何の為に、(何を期待して)その行動をしたか
- その行動をした事で、どうなったか
A君は何を期待して行動して、その行動をした事でどうなったか
お弁当の時間にソースを一気飲みしたのは、何を期待していたのでしょう?
隣の子が急にそんな事したら、皆さんならどうしますか?私だったら驚いて「どうしたの?」って声を掛けてしまうかもしれません。
お友達の近くにずっといたのは、何を期待していたのでしょう?
知り合いが黙って近くにいたら、皆さんならどうしますか?私なら他愛も無い話を振っているかなと思います。
様々な答えがあると思いますが、私の様に「話し掛ける」方もいらっしゃるのではないでしょうか。
まさに、A君の目的はそこです!
A君の養育環境は・・・
お母さんに話を聞いてみると、色々と事情があって「私がAを守らなきゃ」という意識が強く働いていた事が分かりました。その親御さんの愛情が、「A君が自分の気持ちを相手に伝わる様に発信する」前に、その必要性を無くしてしまっていたのです。
そしてA君は「自分は発信せずとも」周囲の人が要望を叶えてくれる、という経験を積んでいってしまったのです。
親御さんであれば察してあげることも可能かも知れませんが、同級生にそこまで求めるのは無茶ですよね。上記の様に話し掛けてくれる人が常に近くにいてくれたら良いですが、そうではない場合、A君からしたら「誰も自分の事を分かってくれない」という解釈になってしまいます。周囲の人は、これっぽっちも悪意がないのに、です。
- A君の誤認識を解していく事
- 自分から発信させる事
- 自分の言動に責任感を持たせる事
をテーマに、親御さんとカウンセラーでA君に対して接していきました。
A君のカウンセリングの進め方
A君は、家にいる事がほとんどだったので、まず心理検査を用いて振り返ったのは、A君から見た家族の印象と、家族から見たA君の印象でした。
A君は、親御さんからの声掛けを
- 介入が多い
- 期待されていない様だ
- 親に頼らず自分でしたい
と感じており、何の為に言われているかという点には考えが及んでいませんでした。そのため、親御さんが「学校」や「勉強」の話をしようとしても拒絶感しか無かったようです。
まずは、お互いに自由に意見を言い合える話題を作れないか探しました。
親御さんは、A君に
- 音楽の話
- ゲームの話
- 家族の話
- A君が生まれる前の話
- 生まれて間もない頃の話 等
をしたそうです。中でも特に、音楽の話はA君の反応が良かったそうです。
私もカウンセリングの中で楽器の話、指揮者の話、楽団の話等を聞いていきました。そこにはA君のこだわりがたくさんありました。そういった事については、今までのA君とは思えない程多くの事を私に話してくれました。
その後、A君が選んだ道は・・・
進路を決める時期にA君は私に、自分から次の様に話してくれました。
「楽器を作る職人になりたい」
日本では学べる所は少なく、海外に行って学ぶ事になるとの事でしたが、A君は自らその道を選んだのです。海外へ出発するまでの間で新たにアルバイトも経験し、社会的にも、自分の行動に責任を持てる様になりました。
自分の夢を叶えるべく、海の向こうで頑張って欲しいと願っています。
普段とは違う視点から物事を捉えてみることで気づくこと
さて今回の様に、「普段とは違う視点から物事を捉えてみる」事で、気づく事って多いんですよね。
- 学校を休んでいる状態が長期化してきた
- 最近、子どもの様子が停滞している様に感じる
- 建設的な会話をしようと心掛けているのに、いつも同じ様な結果になってしまう
こういった倦怠感を、親御さんが感じているとしたら、気付かない間に「一端」にばかり意識が向いてしまっているかも知れません。第三者に話してみる事や心理検査の結果を検証してみる事で、「違う側面」からお子さんの状態を見てみませんか。
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