【事例】自分の要望や主張を言葉以外で表現する不登校の中学2年生A子ちゃん③
こんにちは。不登校支援センター横浜支部カウンセラーの本沢です。
不登校支援センターには、
- 4月張り切り過ぎて少し息切れしてしまった子
- 自分でも何だか良く分からないけどやる気が出ない子
- 自分で何かを決めたいけれど一人ではなかなか決めきれない子
など、色々な子達が来られます。
それは、困難な状況を自分で何とか対処したいと考えているからです。
そういう子たちを「心の弱い人」とは言いません。むしろ「強い心の持ち主」です。
最善の方法を模索する為に、一人になる事が必要だったり、得意な事・好きな事をやりながら自分の強みを思い出したり、一つ一つ出来た事を噛みしめているのかも知れません。
「連休」は、誰にとっても非日常的な時間です。日常では感じ得なかった事を感じる機会になります。つまり日常では起きにくい変化が起きやすいという事です。自分にはどんな変化が起きたかな、子どもはどうかな、他の人はどうかな、と今一度振り返ってみてはいかがでしょうか。
嬉しい変化があるかも知れませんよ。
さて今回は、A子さんとB子さんの合同セッションの中で、話題が徐々に変化してきたところからでしたね。前回【事例】自分の要望や主張を言葉以外で表現する不登校の中学2年生A子ちゃん②の続きを書いていきたいと思います。
※【事例】自分の要望や主張を言葉以外で表現する不登校の中学2年生A子ちゃん
※【事例】自分の要望や主張を言葉以外で表現する不登校の中学2年生A子ちゃん②
合同セッションの中、話題が変化してきたA子ちゃんとB子ちゃん
A子ちゃんが親御さんの話をし始めると、B子ちゃんも家族の話をします。B子ちゃんが友達の話をし始めると、A子ちゃんも友達の話をします。そんな風にバラバラだった話題が少し近づきました。それでも、A子ちゃんもB子ちゃんも順番に私に話し掛けてきていたので、応答するのは私でした。
その中で嫌いな食べ物が同じだったというシーンがありました。私は「お!リアクションを取るチャンスだ!どうするんだろう」と思って見守っていると、お互いに「あ!」と思ったのか、顔を見合わせていました。
その日はそこまでで、お互い会話するまでに発展する事はなく終わりました。
合同セッションの後日・・・
後日A子ちゃんのお母様に、その日のA子ちゃんの様子をお伺いしてみました。帰宅後に大きな変化は見られず、「同じ年の子だった」「こんな話してた」など淡々と話をして、「とても楽しかった」という様子ではなかった様です。
A子ちゃんとのカウンセリングの中で、B子ちゃんの印象を聞いてみると「特に印象的な事はなかった」と振り返っていました。「自分とは好きなものも違うから何話せば良いか分からないけど、話している内容は面白いものもあった。」といった感想でした。
B子ちゃんにもA子ちゃんの印象を聞いてみると、「優しそうな子だった」と、こちらも悪い印象ではなかったのですが、それ以上ではなかったです。
ここまでの状況をちょっと想像してみてください。
2人はお互いを嫌がる事こそないですが、とても仲が良いという印象は持ちにくいのではないでしょうか。
中には、相性が良くないから、もう会わせない方が良いのではないかとお感じになる方もいらっしゃるかも知れません。ですが、合同セッションに参加してもらう上で、相性が良いか悪いかは問題ではありません。むしろスタートは、ちょっと距離があるくらいの方が意味あります。
何故スタートはちょっと距離があるくらいの方が良いのか
なぜならば、あくまで疑似体験だからなんです。
「クラス」「部活」など子どもにとっての「社会」には、様々な性格の子がいます。「似た」性格の子はいるかも知れませんが、「同じ」性格の子はいません。
だからこそ、その中で生活をしていく為には「自分と他人は違う」事を受け入れ、適応していく必要があります。自分を主張しすぎる必要もないし、相手に合わせすぎる必要もないのです。
どちらも必要です。バランスが大事なのです。集団に入る事に耐性が低い子は、そのどちらかを出し過ぎてしまう傾向があり、結果として上手く集団に馴染めず「孤立感」や「疎外感」を感じてしまいます。
その子にとって「楽な」バランスを見つける事が出来ると、集団に入る事への抵抗は低くなります。
その為の環境を整えたり、サポートをしてあげるのが周りの大人の役割だと感じます。
最後に・・・
Aちゃん、B子ちゃんのその後ですが、イベントや合同セッションなど集団行動を疑似体験する機会に何回か参加してもらう中で、この二人の仲は見違えるほど深まっていきます。また他の子たちとも友好的に接する事が出来る様になりました。
先ほどの、「その子にとっての楽なバランス」がだんだん掴めてきたのでしょう、二人とも高校から復学して委員や部活などで大活躍しています。
今回は、A子ちゃんの「変わりたい」という意志を引き出せた事で、環境を整えてあげる事ができ、その体験を生かして成長してくれた事例を紹介しました。
この様に、「こちらがしてあげたい支援」ではなく「子どもが求めている支援」を正確に把握することで、関わり方を一緒に考えていきましょう。
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