不登校を使いこなす高校1年女子のAちゃんの事例
こんにちは。不登校支援センター大阪支部の佐久真です。
本日は、不登校支援センターに通って既に2年半になる、とある女子高校生Aちゃんのお話を紹介します。
ほとんど学校に通えなかった中学時代のAちゃん
Aちゃんは、中学1年生の頃から学校に通いづらくなり、中学2年生の進級時からは全く通えなくなりました。
不登校支援センターに相談にいらっしゃったのは、そんな状態が続いてご両親も閉塞感を感じていた2年生の夏休み明けです。
初めてセンターに来られたとき、親御さんは「このまま何もせずに、ただ待っているだけでは娘の状態は悪くなる一方です。一体どうしたらいいのか・・・」と悩んでいらっしゃいました。
カウンセリングには11月末頃まで、ご両親だけで通っておられました。しかし、年越しを目の前にした12月初旬に、急にAちゃんが「私もやっぱり相談にいく。お母さんたちが行っているところに(不登校支援センター)に連れて行って!!!」と急に言い始めたのです。
初めて不登校支援センターのカウンセリングに来てくれたAちゃん
かなり緊張した面持ちでしたが、もともと人と話すことは好きなAちゃん。
同級生は苦手だけど、大人と話すのはそんなに苦手じゃない、と聞いていたので、私ともいろんな趣味の話(アイドルやお笑い、ゲームや時事ネタなど)で意気投合していました。
学校の話しももちろんしていました。
- 「このままずっと行けないのもな〜・・・」
- 「もうすぐ3年生やしな〜・・・」
- 「勉強遅れてるしな〜・・・」
等々、様々な不安の気持ちを話してくれるようになりました。
その中でしきりに気にしていたのは・・・
自分が不登校児であるということ。
長期的に行けていないので、周りと比べて自分はダメな子。。劣っている。。というようなことを、しきりに気にする子でした。
そんなAちゃんに、私から不登校支援センターでよくする話をした時に、その言葉がAちゃんにはすごく解りやすく、自分の中にストンと落ちてきたそうです。
「不登校は”なる”ものではなく自分で”使う”ものなんだよ」という言葉です。
私は、不登校支援センターに来ている子どもたちに、
不登校=学校を休むという行動によって学校のストレスを対処する
という、それも立派なストレス対処法の一つなんだよ、と伝えています。
大人だって、社会のストレスに対して
- 会社に行かない
- バイト先で口をきかない
- 上司に近づかない
というような一刀両断的なストレス対処法はよく使いますよね?
でも何故か『不登校』だけは、それらとは違う、何か特殊なものとして捉えられることが多いと感じています。
会社を出社拒否するサラリーマンも多いこの世の中、そうした大人が不登校をもし批判していたら、「あなただって不登校の子どもと同じ行動取ってますよ!」と言いたくなってしまいます。
話は戻りますが、Aちゃんはこの”不登校を使う”というキーワードを得てからは、自分は不登校児なんだ、、、という劣等感は徐々に薄れて行きました。
中学校3年生を目前としたAちゃん
少しずつ『不登校=学校に行かない』という以外のストレス対処法を私と一緒に考えて、別室登校やご家庭、合同カウンセリングなどでその対処法を試し、成功したらその対処法に自信を持たせるために何度も同じ体験をさせ、成功体験を積み重ねて行きました。
結果、Aちゃんは現在高校1年生ですが、中3の3学期時点では週三回の教室登校が出来るまでになっていましたので、その延長上に高校入学をしました。
引き続き新しい環境でも「学校を休むという行動」をもってストレス対処もしていますが、週の半分は休む以外の対処法でやりくりしています。
高校入学時から『不登校=学校に行かない』という行動ばかり使ってしまっていたら、あっという間に出席日数が足りなくなり、留年の危機に陥っていたことでしょう。
他の多くの同級生と同じように、完璧に毎日学校には通えなくても、
AちゃんはAちゃんなりのペースで毎日通えるようになることを目標に今も頑張ってます。
不登校を使いこなすということ
ある時Aちゃんが私に、「ねえ先生、最近の私って不登校をうまく使いこなせてると思わない??笑」と笑いながら言ってきました。
私は「うん、とても上手に使えていると思うよ。自分のことをよく知っているAちゃんだからこそ出来ることだよね!」
と答えました。
おそらくこの先、進級をしても就職をしても、バイトを始めても、彼氏ができても、それらのストレスに一刀両断的に『行かない』『やらない』『話さない』などの対処法は使うと思います。
しかし、それだけに頼らず他の対処法も持っているAちゃんだからこそこの先の人生をうまく乗り越えて行くすべを、この高校生活の間にしっかりと身に付けてくれるだろうなと思っています。
皆さん、少し視点を変えてみてください。
うまく、不登校を使いこなしながら少しずつスローステップで復学して行くからこそ、成功体験の重なりから子どもが『自信』をもつようになるのだと、私共は考えています。
『学校を休む=悪いこと』では決してありません。
それは考え方を押し付けたいわけではなく、そのように考えて頂いた方が、『不登校=学校に行かない』という行動に、お子さんが固執しなくなるかもしれません。
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